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工事損失引当金と低価法の関係

システム開発等の請負契約についても、「工事契約に関する会計基準(企業会計基準第15号)」の適用対象となりますが、受注した案件で赤字が発生する見込みとなった場合、工事損失引当金と棚卸資産としての低価法の適用の関係をどのように考えればよいのかが問題となります。

まず、工事契約に関する会計基準の第19項では、以下のように定められています。

工事原価総額等(工事原価総額のほか、販売直接経費がある場合にはその見積額を含めた額)が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、その超過すると見込まれる額(以下「工事損失」という。)のうち、当該工事契約に関して既に計上された損益の額を控除した残額を、工事損失が見込まれた期の損失として処理し、工事損失引当金を計上する。

そもそも工事損失引当金は、工事進行基準が強制されていなかった時点において、工事完成基準で処理を行っている会社が、将来に損失を繰り延べないようにするために必要とされていたという経緯がありますが、「工事契約に関する会計基準(企業会計基準第15号)」では、第20項で工事損失引当金については、「認識基準が工事進行基準であるか工事完成基準であるかにかかわらず、また、工事の進捗の程度にかかわらず適用される」とされています。

ただし、第21項で表示上の処理として、「同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合には、貸借対照表の表示上、相殺して表示することができる」とされています。

一方で、「棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)」の第3項では、「棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる。」とされており、仕掛品については低価法の対象としなければなりません。

すなわち期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額まで評価損を計上しなければなりません(第7項)。

そこで、BSに仕掛品として計上されている開発途中の棚卸資産について、赤字が見込まれることとなった場合に、工事損失引当金を計上すべきなのか仕掛品の評価損として処理すべきなのかという疑問が生じます。

「工事契約に関する会計基準(企業会計基準第15号)」では、結論の背景(第66項)で低価法と受注工事損失引当金の関係について、以下のように述べられています。

工事損失が見込まれた段階で工事損失引当金の計上を求める趣旨は、第61項で述べたように、棚卸資産会計基準が通常の販売目的で保有する棚卸資産の簿価の切下げを求める趣旨とも共通していると考えられる。

しかし、棚卸資産会計基準は、必ずしも工事損失の会計処理を念頭に置いて定められたものではない。このため、工事損失が見込まれる場合において、仮に棚卸資産会計基準で定める会計処理をそのままの形で適用すると、棚卸資産の評価に切放し法を選択した場合の会計処理が、本会計基準による工事損失の会計処理に必ずしもなじまないことが指摘された。また、たとえ工事損失の見込額が変動しない場合においても、工事の進捗にしたがって、工事損失引当金から棚卸資産(簿価の切下げ)への振替えが必要となるが、取引内容によっては棚卸資産の種類が多岐にわたり得るため、実務上の負担に対する懸念も指摘された。

さらに続く第67項で以下のように述べられています。

このため、本会計基準においては、実務上の過重な負担を回避しつつ、必要な情報の提供が図られるように、工事損失のうち既に計上された損益の額を除いた残額の全体について工事損失引当金として計上することを求める一方で、当該工事契約について未成工事支出金等として計上されている棚卸資産がある場合には、その旨及び当該棚卸資産の額のうち、工事損失引当金に対応する額の注記を求めることとした(第22項(4)①参照)。

上記の点から考えると、赤字が見込まれる場合は、状況にかかわらず工事損失引当金として処理するという選択も認められるものと考えられます。

しかしながら、受注金額<仕掛品となった場合において受注金額を超える部分については、見積もりではなく確定額といえる金額ですので引当金の概念にはあまりなじまないと考えられます。

したがって、赤字が見込まれる場合には以下のように処理するほうが理論的と考えられます。

①受注金額>仕掛品残高の場合

工事損失引当金として損失が見込まれる金額を計上する

②受注金額<仕掛品残高の場合

仕掛品評価損として計上する。

低価法の正味実現可能価格は、「売価(購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものをいう」(第5項)とされていますので、工事損失引当金として計上された場合とPLへの影響は同一になるものと考えられます。

このような処理を行っている開示例としては、平成22年3月期の菱友システムズがありましたので紹介します。

日々成長。

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