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出る杭はもっと出ろ!

包括利益の表示に関する会計基準(その3)

包括利益の表示に関する会計基準(その1)および(その2)で平成23年3月31日以降終了の連結会計年度から適用開始となる「包括利益の表示に関する会計基準」について書きましたが、今回はその中の「組替調整額」(基準第9項の注記)についてです。

なお、「組替調整額」の注記は、1年遅れで平成24年3月31日以後終了する連結会計年度から適用開始となっている点、注意が必要です。

「組替調整額」の注記が必要となるのは、「当期純利益を構成する項目のうち、当期又は過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分」が存在する場合です(第9項)。

なぜ、組替調整が必要になるのかというと、当期純利益が「その期間中にリスクから解放された投資の成果であって、報告主体の所有者に帰属する部分」を示すようにする必要があるためです。この(当期)純利益の定義は、企業会計審議会が公表している「財務会計の概念フレームワーク」の第3章 財務諸表の構成要素 第9項に掲げられているものの一部を抜粋したものです。

例として以下の前提で、期末に時価評価されている「その他有価証券(評価差額金)」を考えてみます。

前提

1.X社(親会社)はその他有価証券としてA社株式のみを保有しており、取得原価は1,000、前期末(X0年3月31日)での時価は1,200(よって評価益200)であった。
2.当期(X1年3月31日)中にA社株式すべてを1,300で売却した。
3.法定実効税率は40%とする。

この場合、通常は以下のような仕訳の流れになります。

ここで、包括利益という概念を導入するのであれば、前期までの評価益の金額(200)は「その他の包括利益累計額」として計上し、当期に生じた評価益部分100のみを当期純利益に反映させるという方法もあり得ます。

仕訳で考えると以下のようになります(なお、評価益に対して計上されていた繰延税金負債をどうするという話はありますが、それは無視します。)

ここで、先程の純利益の定義に戻ります。すなわち、純利益は「その期間中にリスクから解放された投資の成果であって、報告主体の所有者に帰属する部分」を表さなければなりませんが、期末に時価評価されていた有価証券を売却したという取引は、まさに「リスクから解放された投資の成果」を意味するので、取得価額1,000と売却価額1,300の差額300を当期利益に反映させるように調整が必要となります。

そして、この例でいうところの300が税効果調整前の「組替調整額」と呼ばれるものになります。

上記の組替調整の必要性については、包括利益への二重計上を防止するためというような説明がされることもありますが、期首の振り戻し仕訳(上記仕訳例②)を計上し、その他包括利益に計上すれば二重計上されることはないと思いますので、よくよく考えるとなんとなく腑に落ちない説明になってしまうように思います。

したがって、「市場関係者から広く認められている当期純利益の有用性」(基準第22項)を保つために、その他包括利益から当期純利益へ組替が必要となるという理解の方が理解しやすいと思います。

上記の前提をベース(売上等の金額は適当に追加)にした連結損益及び包括利益計算書(1計算書方式を採用していると仮定)連結貸借対照表(抜粋)、連結株主資本等変動計算書(抜粋)の関係のイメージは以下のようになります。なお、その他の包括利益の内訳項目は税効果調整後の金額で表示する方法を採用しているものとします。

結果として、その他包括利益累計額は期末時点で0になりますが、残高の推移は厳密には以下のようになります。

すなわち、その他包括利益累計額(税効果考慮前)は、当期に100追加で発生し、売却によりリスクから解放されたことにより当期純利益へ300の組替が生じたということになります。

上記の前提では時価評価されている有価証券が1銘柄なので金額の推移が明らかですが、複数銘柄存在する場合には、時価の変動と売却等による変動が混在することになるので、基準第9項で「組替調整額として、その他の包括利益の内訳項目ごとの注記」が要求されています。

上記の場合の注記例を示すと以下のようになります。

今回は、あまり複雑にならないように親会社が保有する有価証券を前提にしましたが、実際には少数株主が存在する子会社で時価評価されている有価証券を保有しているケースもありますので、その場合には少数株主持分も考慮する必要があります。

日々成長。

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