閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

2011年危機(その2)

昨日に引き続き「2011年本当の危機が始まる!」(朝倉 慶 著:ダイヤモンド社)という書籍で、私が面白いと感じた点を紹介します。同書は一読の価値があると思います。以下「」内は同書の要約です

日銀が2010年10月に実施を発表した金融緩和策、すなわちファンドを創設して、国債や社債のほか、ETFやREITを買い付けるという策について「世界の中央銀行は数あれど、ここまで大胆な政策を発表したところはありません。」とのことです。

既に他国ではやっているところがあるんだろうなと思っていたので正直意外でした。

また、筆者は上記の策を評価しつつ、一方で「株や不動産を購入するという決定は画期的なものですが、それなら手の内を見せてはならないでしょう。」「せっかくの政策も、5000億円(ETF45000億円、REIT500億円)という額を公表したために台無しなのです。」としています。

確かに市場は将来の予測、連想で動くものなので、例え実態は5000億円程度を予想していたとしてもそれを公表せず、強気な姿勢で買い付けを行うとのみ公表してたら勝手に連想で株価はもっと反応していたかもしれません。

中国の資源戦略について、「アフリカにおける中国の労働者は100万人を超えるという異常な事態。このほとんどは資源の開発のためか、または、中国の資源権益供与に協力的なアフリカ諸国のインフラ整備のための労働者です。」と述べられています。

日本と人口の規模が違うとしても、資源確保のために100万人の労働力をアフリカに送り込めるというのは一党独裁による中国の強みと言えそうです。

基礎物資の価格の推移について最近10年程度の推移をみると「金は10年前に1トロイオンス250ドルだったものが2010年10月14日現在1388ドル(当時から5倍以上の値上がり)、WTIの石油価格輪20ドル割れから83ドルに上がったので3~4倍、銅の価格は10年前に1トン2000ドル以下で推移したいたが、2008年には9000ドル、その後下がって現在はおよそ8000ドル台で推移(石油と同様3~4倍)、鉄鉱石に至っては10年で8倍近くになっている。この他、小麦もトウモロコシも10年前は1ブッシェル2ドル台でしたが、現在は小麦が7ドル台、トウモロコシは5ドル台とおおよそ2~4倍になっている。」

日本では円高が進んでいるためこのような価格の上昇を意識しづらいですが、新興国の成長にともない長期のトレンドとして資源価格は上昇しているという点は意識しておく必要があると感じました。銅の需要については、イェール大学の調査チームが、世界中の銅の需要が二十一世紀初めの数年間に急激に伸びると予想しています。その調査データによると、発展途上国の電力供給、建築、自動車、兵器の水準を先進国と同レベルに引き上げるためには、これから採掘される残りの銅と現在使用できる銅がすべて必要になるとしています。

銅については同書でも紹介されており、要約すると「銅の需要はここ数年、中国を中心に爆発的に増えてきている。新興国の発展には、道路、鉄道、電力などのインフラ整備が欠かせないが、これには大量の動画必要となる。銅の1人当たりの消費量は、2009年の日本は6.8キロ、これに対して中国は05年には2.7キロであったが、09年には5.3キロに倍増している。まだ発展途上のインドは0.46キロであるが、これから爆発的に増えていくのは必至である。今後爆発的に伸びることが確実なエコカーは、1台あたり60~70グラムもの銅を必要とする。これは従来のガソリン車の3~4倍近い使用量である。」ということです。

また、「国際銅研究会によると、09年は8000トンの供給過剰だったものが、10年1~5月は19トンの供給不足となり、ついに危険水域に入ってきた」と紹介しています。

国際銅研究会が公表している直近のデータをみると2010年10月、11月は供給がわずかながら需要を上回っているようすが、供給が逼迫しているというのは事実のようです。

新たな素材が開発される可能性はありますが、しばらくはこの傾向が継続すると思っていたほうが無難だと思います。

筆者は新興国と先進国で二極化している世界の景気に言及しています。「日米欧は金利引き上げなどもってのほかの状況にある一方で、リーマンショック後オーストラリアは6回の利上げを繰り返し政策金利は4.5%となり、インドも2010年に入って5回の利上げを行い政策金利を6%にしているそうです。韓国、台湾でも金利の引き上げが行われています。」

「2010年4月~6月のインドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピンの平均実質成長率は前期比8.6%の伸びで、シンガポールに至っては24%という驚異的な伸びとなっている。」

さらに、「IMFによるとBRICSが世界経済に占める比率は1995年に6%であったが、2010年には16%、2015年には22%となり米国に並ぶとみられている。」そうです。

新興国の好景気についてはよく聞かれるところですが、日本では最近は中国一辺倒になっているように感じますので、その他の国についても注意を払う必要があることを再認識しました。この点、ビジネス的には、C.Kプラハード氏の「ネクストマーケット」で指摘されているように商品のパッケージ数量の工夫や本当に必要とされる機能の見直し、価格設定等が重要になると思います。

「新興国のバブルは日米欧の低金利で溢れだした資金が流れていき引き起こされたもの」と分析しています。これはよく言われていることかもしれませんが、新興国の発展を人口の点からみるとBRICS30億人、ASEAN6億人と、日本や米国、ユーロ圏とはスケールが違うためインフレに向かうというのは、確かにそうなるのが自然なように感じます。

「EUでは投機的なCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は禁止すべきという基本方針を打ち出したものの、米国や英国ではCDSの規制をするつもりがないので実現不可能である。英米がCDSの規制を行わないのは、CDSを含めたデリバティブ取引は英米金融機関のドル箱だからである。」

金融のグローバル化というのがデメリットとなっている一例と言えそうです。確かのロンドンやニューヨークで取引可能であればEU圏内で取り扱いがなくても機関投資家は一向に構わないと思います。

なお、CDSについて筆者は日本国債の場合を例として、仮に日本国債残高のうち500兆円にCDSで保険が掛けられていて実際に日本が破たんしたら誰が500兆円を決済できるのかという疑問を呈しています。

この点、「デリバティブ取引は清算がつくように取引所で取引すべきだとして、取引所経由のデリバティブ取引に移行する試みが続いているように報道されているが、2008年に想定元本6京円に及んだデリバティブの店頭取引は、BISの報告によればその額は現在も6京円でほとんど変動していない」と述べています。

日本国債のCDS残高が想定元本でどれくらいあるのか調べてみましたが、残念ながらよくわかりませんでした。相対取引であるので取引所取引と異なって統計等の数値が一般人には調べにくいということなのだと思います。

それにしても、想定元本が6京円というのは想像以上でした。「京」という単位は、久しぶりに見た気がします。世界全体の実体経済が約5000兆円なので、それと比べると異常な水準であるのが明確です。

ただし、投機目的でFXをやっている個人も増えていることからすると、デリバティブの残高の水準が6京円というのも納得できてしまいます。

また、日本の損失が海外ファンドの儲けになる構図として、日本のファンドは損失を重ねることが多いのに対して、海外の有力ファンドは儲かるのかという点について、「海外の有力ファンドは日本のファンドが売った時に買って、買ったときに売るからである。日本のファンドは格付けが下がると自動的に売ることにしているが、海外の有力ファンドは格付け会社にも情報網があるに違いないので先に売っておき、格付けが下げられ日本のファンドが売却したところを買い戻す」と述べています。

特にこれに関連して述べられているPIMCO関連の話も興味深かったですが、長くなりましたので割愛します。

なお、PIMCOについては2011年3月9日に旗艦ファンドで米国債・米機関債などをすべて売却したというショッキングな情報がありましたので紹介しておきます。
「[ニューヨーク 9日 ロイター]米債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)の旗艦ファンドである「トータル・リターン・ファンド」は2月末現在で米国債・米機関債など米政府関連債券をすべて売却した。9日にウェブサイトで公表した。1月末時点での保有比率は12%だった。 同ファンドで2369億ドルを運用するビル・グロス共同最高投資責任者(CIO)は、米財政赤字とインフレへの影響への懸念を繰り返し表明していた。グロス氏は先週も、連邦準備理事会(FRB)がラストリゾートとしての買い入れを終了すれば、10年債利回りが4%に上昇するというのは妥当な見通しと述べていた。 今週のリポートでもグロス氏は、FRBが量的緩和を終了すれば、だれが国債を買い支えるのかと疑問を示していた。    グロス氏は長期にわたり、米国債への弱気見通しを示していたため、トータル・リターン・ファンドの保有比率ゼロが伝えられても、債券市場はそれほど反応しなかった。 2月末の同ファンドは、現金・現金同等物(Tビル=短期債=含む可能性あり)保有比率が545億ドル(比率23%)となり、1月末の119億ドルから急増した。モーゲージ債券は34%(1月末42%)、投資適格級債券は18%、新興国市場債券10%、高利回り債6%、国外先進国債券5%、地方債4%となっている。 米政府関連債券には、国債、インフレ連動債、機関債、金利スワップ、国債先物・オプション、米連邦保険公社(FDIC)保証債が含まれる。」

債権王といわれたビル・グロス氏が米国債・米機関債をすべて売却したというのは、かなりのインパクトがあります。自分のポートフォリオも見直そうと思います。

日々成長

関連記事

  1. 物価上昇率2%はどの程度の水準か?

  2. 大学生数

  3. 電力不足の不可解ー日本版WSJより

  4. 「第二会社方式」とは?(その2)

  5. 23区格差ー池田利通著

  6. 日産自動車の配当利回りは4.62%




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,838,757 アクセス
ページ上部へ戻る