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残業の自己申告制について(その2)

昨日のエントリの続きです。

「労働時間」については、労働基準法第32条1項で「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」と定められていますが、「労働時間」の定義については特に定めがありません。

そこで「平成22年版労働基準法(上)」(厚生労働省労働基準局編)によれば、「労働とは一般的に使用者の指揮監督のもとにあることをいい、必ずしも現実に精神又は肉体を活動させていることを要件と」しないとされており、よって、いわゆる手待時間も労働時間であるとされています。

最高裁も基本的に同様の見解にたっており、「労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」(三菱重工長崎造船所事件 最高裁第一小法廷平成12年3月9日判決)としています。

では、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をどのように考えるべきかですが、この点については「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務(中央経済社 安西 愈 著)」で安西氏がまとめている五つの視点が参考になると思います。

安西氏によれば、「労基法第32条の労働時間と言えるのは、原則として以下の五項目の拘束を使用者から受けて事業目的のために肉体的・精神的活動を行っており、労働から解放されていない時間といえる」(上記書籍P6)としています。

以下がその五項目です。

①一定の場所的な拘束下にあること(どこで業務や作業等の行為を行うか。)

②一定の時間的な拘束下にあること(何時から何時まで行うか、どのようなスケジュールで行うのか。)

③一定の態度ないし行動上の拘束下にあること(どのような態度、秩序、気率等を守って行うか。)

④一定の業務の内容ないし遂行方法上の拘束下にあること(どんな行為(業務)をどのような方法、手順で、どのようにして行うか)

⑤一定の労務指揮権に基づく支配ないし監督的な拘束下にあること(それを上司の監督下とか服務支配下に行う必要があるか、自己の自由任意か、あるいはそれを行わないと懲戒処分などや上司からの叱責を受けたり、賃金・賞与等の取扱い上不利益等を受けるものであるか。)

そしてここをきちんと意識しておく必要があると考えられるのは、罰則付きの労基法上の労働時間の成立要件は上記5項目の拘束要件を充足する必要がありますが、労働の対価として賃金を支払うべき時間か否かという民事上の賃金請求権の成否の観点とは必ずしもイコールではないという点です。

すなわち、労働基準法の労働時間でなければ賃金を支払う必要がないと考えたくなりますが、労働基準法上の労働時間でなくても賃金を支払う必要があるケースがありうるという点は注意が必要ではないかと思います。

例えば、年次有給休暇の賃金については、労基法第39条第7項で「使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇の期間又は第4項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。」とされています。

一方で、労働時間との関係では、事業場外労働(第38条の2)のような「所定労働時間労働したものとみなす」というような定めは特にありません

したがって、労使協定により半日単位あるいは時間単位で有給の取得が認められる会社(所定労働時間8時間とする)において、半休(有給)を取得した場合に午後2時に出社して午後9時まで作業した場合(途中休憩の要否については無視する)に、実労働時間は7時間なので、労働基準法上の時間外労働は発生しないということになります。

しかしながら、就業規則等で、「有給休暇を取得した期間については、所定労働時間労働したものとしたものとみなす(半日給の場合は4時間とする)」というような規定が置かれているか、あるいは運用上そのような解釈で運用されている場合には、民事上の取扱いとしては、実際の労働時間7時間+みなし4時間-所定労働時間8時間=3時間が残業として割増賃金の対象となります。

以上のように、労働時間を考える場合には、形式的な意義の労働時間と実質的な意義の労働時間という概念に注意して考える必要があると思います。

形式的な意義の労働時間とは、民事上の労働契約に基づく労働義務を負っている時間であり、労働契約に形式的に定められた始業・就業の時刻によって算定され、契約の有効無効を形式的に判定したり、賃金対象時間や遅刻、早退についての債務不履行か否かを判断する際に用いられる概念です。

一方で、実質的な意義の労働時間とは、現実の具体的拘束状態に着目して、その時間が使用者の指揮命令下に置かれて就労している状態かどうかという実質的な観点から把握される時間であり、労基法上の労働時間に該当するかどうかの判断に用いられる概念です。

実質的な労働時間ではないが、形式的な労働時間に該当するものとしては、やむを得ない事情で承認された遅刻や、台風や地震などにより会社の命令で退社時間が早まったようなケースが考えられます。

「労働時間」の意味を理解したところで、残業の自己申告制に話を戻そうと思いますが、続きは次回にします。


日々成長。

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