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厚生年金制度改革-二分二乗方式って意味あるの?

先週のことになりますが9月29日に厚生労働省の年金部会で提示された厚生年金制度の改革案が話題となりました。この案は、二分二乗方式といわれるもので、専業主婦(いわゆる3号被保険者)について、夫が支払った保険料の支払い額は妻が共同して支払ったものとみなすものです。

検討内容の詳細は、第3回社会保障審議会年金部会の資料1“第3号被保険者制度の見直しについて”で述べられていますが、フランスの税制で用いられているN分N乗方式を参考にしたようです。

N分N乗方式というのは、フランスでは課税単位が家族単位であり、家族で所得を合算した上で所定の係数(例えば夫婦と子供2人の場合は3)で除した所得金額に累進税率を乗じた額を計算し、それに再び係数をかけて税額を計算するという方式のようです。
つまり、世帯単位で所得を合算し累進税率を乗じるという方法です。これはこれでなかなか合理的な税制ではないかと思います。

このフランスの税制の考え方を参考にして二分二乗方式ということですが、単に半分にしているだけ基本的に世帯での支給額に変化はないですし、離婚時には現制度でも年金の分割が認められているので、何がしたいのかがよく見えてきません。

考えすぎかもしれませんが、あまりにも意味がないように思えるので、何か裏があるのではないかと思えてなりません。

前述の資料では、最終的には二分二乗方式が考えられるとしているものの、①妻に別途の保険料を求める案、②夫に追加の保険料(定額あるいは定率)を求める案、③妻の基礎年金を減額する案が示されています。
二分二乗方式なんで意味ないという世論を形成し、じゃあ上記の①~③へということを狙っているのでしょうか

最終的に制度がどのように改革されるのかはわかりませんが、現行税制を前提にすれば、夫婦で年金を分割したほうが公的年金控除が大きくなり世帯全体での手取りが増える可能性があり、かえって有利ということになるような気もします。
だとすると税制を変えて実質増税となるようにすることを考えているということもあり得ますが、それほど税収に与える影響は大きくないと思いますのでこれは考えすぎかなと思います。

現行の年金制度を前提とすると、遺族厚生年金の受給額については影響が大きいかもしれません。細かい要件は無視すると、現行制度では老齢厚生年金を受給している夫が死亡した場合、妻は夫の老齢厚生年金の3/4の金額を遺族厚生年金として受給できます。ところが、妻自身が老齢厚生年金を受給している場合には、遺族厚生年金の額が妻の老齢厚生年金の額を上回る場合のみ差額が支給されます(厳密には妻の老齢厚生年金の金額だけ夫の遺族厚生年金の支給が停止されます)。

現行制度の場合、老齢厚生年金の額が100万円だとすると、遺族厚生年金の額は75万円となります。一方で、夫の老齢厚生年金を夫婦で分割して、各々50万円だとすると、遺族厚生年金の額は37.5万円となり、妻の老齢厚生年金の額を下回りますので50万円しか支給されないことになります。

これから年金を受給する世代では、夫が妻よりも年上であることが多く、また女性の平均年齢は男性の平均年齢よりも高いことからすると、気づかずに年金の支給総額を減額するにはうまい方法です。気づかれずに年金支給額を減額することが目的だとは思いたくないですが、あまりにわけがわからない案がでてくると、勘ぐってしまいます。

ちなみに、目的がなんだかよくわからないというのは多くの人が感じているようで、厚生労働省の大臣質疑応答には以下のような記者とのやりとりが載っていました。

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《質疑》

(記者)
昨日年金の特別部会で、主婦の年金改革案について厚生労働省の案が示されました。その中で、不公平感を払拭するという目的があったとは思いますが、保険料も、それから世帯で見た場合には支給額も基本的には変わらないということになりますと、不公平感が本当にそれで解消されていくと大臣はお考えですか。

(大臣)
なかなか難しい質問ですね。これは5月に厚労省で取りまとめて、6月に政府として作りました社会保障の一体改革の中にも、年金制度の見直しの中に、専業主婦の3号の問題について2分2乗方式などでということが書いてあります。これに基づいて昨日から年金部会で審議を始めていただきました。ご承知のように長い歴史があって、厚労省でも、平成13年だったと思いますけれど、案を出してやってきたところがどの案が一番良いのかということが、なかなかみんな一長一短あって、動かせないまま来たと。今おっしゃったように、保険料も変わらないし受け取る額も変わらないで、なんだ形だけじゃないという見方もあるかもしれませんけれども、それでも夫の働きで得た収入であっても、それは妻とともに得た収入だということで、2人で得た収入として2分2乗にしていくということは考え方として公平な形に近付くと、私としては思っています。それはもちろん、夫の掛け金を妻の分も増やすとか、あるいは妻の分を減らすとか、諸外国は払っていない人に対しては出していないところが割と多いのですけれども、そういうことを言いましても、急激に変化してしまうとなかなか受け入れられない。一部には、130万円を下げていくという報道もありますが、そうではなくて、2分2乗と。夫の収入を夫婦のものとみなして、2人で分けていくという方が、今の、妻はまったく負担をしないで夫が入っているその仕組み、2号の人たちが、学生さんも単身の人も母子家庭の人もみんなが専業主婦のために拠出をしている形よりも、それは公平になると思っていますので、一歩前進だと思っています。

(記者)
そもそも形の上ではもちろん家庭の中で解決する形にはなりますが、全体の給付と負担というところで見ると、給付に見合う負担ということには変わりがないように思えますが。

(大臣)
ただ、これはいつもお話しているように、おそらく非正規が増えている、それからパートとかの均等待遇の問題とか女性に働く場があるか、そこで本当に公平な働き方が出来るかということと、そして税制の配偶者控除と年金の負担分と、全部合わせて考えていかなければいけないことなので、そういう意味でも、ここでこういう形で一歩踏み出すということは一歩前進ということなのだと思います。そもそもご承知のように、男女共同参画社会基本法が出来た時から、生き方とか性別に関わるような不公平な社会の仕組みを変えましょうということがまず最初に書いてありますね。その時に何があるのかと言われて、配偶者控除、それから3号の問題などがあった訳ですから、もうずっと宿題になってきているので、それはおっしゃるように根本的解決ではないとは思いますけれども、一歩公平な方向に踏み出すという意味では前進だと考えています。

(記者)
するとこの改正があった後、またもう一段改正が。

(大臣)
それは最終的には3号が無くなって、みんな自分が働ける人は働いて、そのことがきちんと評価されて、自分の収入、自分の年金、自分の保険、自分の税金という形になるのが、これだけの超少子高齢社会で、一家で一人が稼ぎ手という事態ではなくなって来ている、共働きの世帯の方が増えている、そういう状況の中で将来的にはやはりそういう形を目指していく、個人単位を目指していく、というのは民主党がずっと言い続けていることなので、その方向への一歩だと考えていただければいいと私は考えています。
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日々成長。

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