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退職給付債務の計算方法を簡便法から原則法へ変更した場合の処理(その3)

退職給付の計算方法を簡便法から原則法に切り替えた場合の考え方についての続きです。思いのほか長くなっていますが、今回で終わるはずです。

退職給付の計算方法を簡便法から原則法に変更した場合の考え方としては、前回の繰り返しになりますが、以下の三つくらいが思い浮かびます。

1.会計方針の変更と考える
2.会計上の見積りの変更と考える
3.簡便法と原則法の選択適用が認められていた状況から原則法のみが認められることとなったことによるもので会計方針の変更でも会計上の見積りの変更にも該当しないと考える

また、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「過年度遡及修正会計基準」とします)の導入後の事例では「追加情報」として記載されているケースがほとんどであるというのも前回述べたとおりです。

上記と順番は異なりますが、引当金の計算方法の変更ということで、まず会計上の見積りの変更ではないかという点から考えてみます。

これは、「追加情報の注記について」(監査・保証実務委員会実務指針第77号)が平成23年3月に改正される前までは、「会計上の見積りの変更」が追加情報として記載する項目として掲げられていたこと、および実際に追加情報として記載する実務が多かったという事例と整合的です。

しかしながら、過年度遡及修正会計基準の第58項では以下のように述べられています。

「我が国の従来の取扱いでは、監査委員会報告第77号において、会計上の見積りの変更を行った場合、追加情報として、会計上の見積りを変更した旨、その内容及び当該変更が財務諸表等に及ぼす影響を注記することとされている。一方、国際的な会計基準においては、会計上の見積りの変更が当該変更期間及び将来の期間に与える影響と、その内容及び金額の注記を求めており、将来の期間に与える影響については見積りが困難な場合、その旨を注記することとしている。このため、会計上の見積りの変更を行った場合の注記については、国際的な会計基準を参考に、より具体的な取扱いを設けることとした」

上記からすれば、従来は「追加情報」として開示されていたが、今後は「会計上の見積りの変更」としての注記が必要となるということのように読めます。

ところが一方で、過年度遡及修正会計基準の第39項においては、「会計上の見積りとその変更の定義については、基本的には従来の我が国における考え方を踏襲するものであり、従来の実務(注記による開示も含む。)に変更をもたらすものではないと考えられる」とされており、このことからすれば、従来「追加情報」として開示されていたのであれば会計上の見積りの変更であっても「追加情報」で開示して問題ないということになります。

この39項からすれば、簡便法から原則法への変更は、会計上の見積りの変更であるものの従来の開示を踏襲して「追加情報」として開示するというというのは一つの解釈として成り立つように思います。

このように考えた場合、財規8条の3の5第3号において、翌事業年度以降の財務諸表に影響を与える可能性がある場合に求められている注記が必要なのではないかという点が問題となります。
しかし、ガイドライン8の3の5-3において「当事業年度に係る財務諸表に与えている影響額に基づき、当該影響の概要を把握することができる場合には、・・・・重要性が乏しい場合に該当するものとして、注記を省略することができる」とされており、原則法で計算を行うようになれば、遅延認識項目等も開示されることとなり、翌期以降の影響額の概要は把握可能となるのでこの注記は省略することができるのではないかと考えられます。

したがって、「追加情報」として、計算方法を簡便法から原則法へ変更した旨と今期の影響額を記載すれば実質的に「会計上の見積りの変更」として要求されている注記事項を満たすといえるのではないかと思います。

次に、簡便法から原則法への変更が会計方針の変更でも、会計上の見積りの変更でもないという考え方について考えてみます。

まず、計算対象となる従業員等が300名未満であり、簡便法と原則法という二つの選択肢があった状況から、従業員数が300名以上となって原則法しか認められなくなったようなケースでは、会計基準が変わったわけでも、任意に変更したわけでもないので会計方針の変更には該当しないと考えられます。

また、「会計上の見積りの変更」とは「新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更することをいう」とされているところ、従業員数が300人未満であった場合に、計算結果の信頼性に疑義があったとしても原則法で計算することも可能であり「新たに入手可能となった情報」とは言えないので、「会計上の見積りの変更」には該当しないという解釈もありえます。

ただ、このように解釈すると従来から「追加情報」として計上していた理由が何であったのかが問題となります。従来は、「会計処理の対象となる会計事象等の重要性が増したことに伴う本来の会計処理への変更」が「追加情報」の記載対象となる項目として例示されていましたが、これは本来認められない現金主義的な処理を発生主義に改めるようなものが対象であり、会計基準で選択適用が認められているようなものは該当しないと考えらえます。

したがって、どちらかといえば「会計上の見積りの変更」に該当すると考えたほうがすっきりするように思います。

最後に、会計方針の変更と考えるという考え方についてです。
退職給付債務の計算方法を簡便法から原則法に変更した場合に、会計方針の変更として処理しなければならないことはほとんどないと思いますが、会計方針の変更として処理せざるをえない場合も考えられます

そもそも簡便法の採用については、退職給付会計の実務指針の34項において以下のような場合に採用することが想定されています。

「従業員が比較的少ない小規模企業等にあっては、原則法を適用することが相当の事務負担になることも考えられる。また、小規模企業等にあっては、高い信頼性をもって数理計算上の見積りを行うことが困難である場合や退職給付の重要性が乏しい場合が考えられる」

なお、実際には同項の後半で「簡便法を適用できる小規模企業等とは、原則として従業員数300人未満の企業をいう」とされているため、実際には従業員が300名を超えるかどうかが簡便法を適用するか原則法を適用するかの分かれ目になっていると思います。

ところが、対象者数が300人以下で、従来簡便法を採用していた場合であっても、社内での事務管理体制が整備できたため原則法に切り替えたり、重要性がないとして簡便法を採用していたものの、やはり原則法に切り替えたというようなケースも考えらえます。

このような場合であれば、会計方針の変更に該当すると考えられ遡及修正が必要となると考えられます。

結局のところ、退職給付債務の計算方法を簡便法から原則法に切り替えた場合に、遡及修正が必要となるのかどうかという観点で考えるならば、場合によっては遡及修正が必要となるケースもありうるものの、300人基準により変更した場合には遡及修正不要で、当期の影響額を追加情報として開示すればよいということになると考えらえます。

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