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キャッシュ・フロー計算書における為替差損益の取扱い

今回はキャッシュ・フロー計算書における為替差損益の取扱いについてです。新たにキャッシュ・フロー・計算書の担当になった方にとって為替差損益の取扱いは、理解しにくい項目の一つのようです。

なお、以下では間接法によりキャッシュ・フロー計算書を作成しているという前提にたって話をすすめます。

多くの場合、疑問に感じるのは営業外損益に表示されている「為替差損(益)」をキャッシュ・フロー計算書上、営業活動によるキャッシュ・フローの調整項目としなくてよいのか?というもののようです。

特にたまたま(いや、当然?)、以下の「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」の注解7の様式2(間接法の場合のキャッシュ・フロー計算書の様式)を見てしまった場合は、ますます混乱するようです(基準をみたらなら実務指針も確認してほしいところですが・・・)。

 

上記では、営業活動によるキャッシュ・フローの調整項目として「為替差損」が加算項目として記載されており、為替差損益は減価償却費と同様に非現金支出だから営業活動によるキャッシュ・フローの調整項目として処理すると考えてしまうことがあるようです。

このように考えたとしても精算表を作成した時に、為替差損益の行き場がなくておかしいことに気づけばよいですが、ありがちな“よくわからないものは「その他」の原則”にしたがって営業活動によるキャッシュ・フローの「その他」で調整されていたります。

こうなると、もはや意味不明な両建て表示が完成してしまいます(もちろん、その後修正することになるのですが・・・)。

前置きが長くなりましたが、それではどのように考えるのかを確認します。

まず、キャッシュ・フロー計算書を作成する上では、為替差損益を以下の三つに区分して考える必要があります。

①現金及び現金同等物にかかる為替差損益
②営業活動に関連して発生した為替差損益
③①及び②以外から生じた為替差損益

①の典型例は、期末に外貨預金を換算替えしたことにより生じた為替差損益です。

②の典型的例は、外貨建の売掛金や買掛金を期末に換算替えしたことにより発生した為替差損益です。
③の典型例は、外貨建の貸付金や借入金を期末に換算替えしたことにより発生した為替差損益です。

そして、キャッシュ・フロー計算書における取扱いは、それぞれ以下のようになります。

①の現金及び現金同等物にかかる為替差損益は、キャッシュ・フロー計算書の「Ⅳ 現金及び現金同等物に係る換算差額」で調整することになります(営業活動によるキャッシュ・フローにはでてきません)。

②の営業活動に関連して発生した為替差損益は、キャッシュ・フロー計算書上特に調整をする必要はありません。

ここが理解しにくいところかもしれませんので、非常に単純化した例で考えてみます。

(前提)

当期の取引は期首に存在した外貨建売掛金(1$)を回収した取引だけとする。
前期末(期首)の売掛金の為替レートは1$=100円、回収時の為替レートは1$=90円とする。税金費用は無視する。

すると、仕訳、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書は以下のようになります。

 

上記からも明らかなように、何ら特別な調整を加えることなく、キャッシュ・フロー計算書に表示される営業活動によるキャッシュ・フローは実際の入金額と一致します。

あえて理由を述べるならば、為替差損益の生じた原因が営業活動によるキャッシュ・フローに含まれる項目に関連するもの(例えば売掛金や買掛金の評価替え)である場合、為替差損益は税金等調整前当期純利益に反映済みで、かつ税金等調整前当期純利益が営業活動によるキャッシュ・フローを構成し、一方で対象項目(売掛金や買掛金など)の増減には為替差損益の影響が含まれない(上記の例でいえば、売掛金の減少額は100であるが、実際の入金は90という意味)ので、税金等調整前当期純利益に含まれる為替差損益の影響をそのまま生かして問題ないということになります。

最後に③の「①及び②以外から生じた為替差損益」ですが、これが基準注解7の様式2に出てくる「為替差損」の正体です。

これを考える前に、確認しておくべき事項があります。

それは、ャッシュフロー・計算書の作成方法の一つである「間接法」は、営業活動によるキャッシュ・フローをどのように作成するかという方法であって、投資活動によるキャッシュ・フローおよび財務活動によるキャッシュ・フローについては基本的に直説法と同様に総額表示で作成されます。

一応具体例で確認しておくと、前期末の長期借入金が100、期末の長期借入金が200の場合、差額の100を長期借入金の増加額として処理することはしませんという意味です。
変動額は100であっても、期中の新規借り入れが200で、1年内への振替が100で、実際には200のキャッシュ・インがあったかもしれませんし、実際に追加で100借入を行ったのかもしれないわけです。

実務指針では直説法と間接法に優劣をつけてはいませんが、営業キャッシュ・フロー項目についてはフローを総額で把握するのは実務上煩雑であるという点を考慮して間接法が認められているものと思われます。

そして、実務指針の16項では以下のように述べられています。
「作成基準注解(注7)に示されている様式2(「営業活動によるキャッシュ・フロー」を間接法により表示する場合)においては、税金等調整前当期純利益に対する加算項目として為替差損が例示されているが、この為替差損(益)は、損益計算書において計上された為替差損(益)のうち、原則として、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の小計欄以下の各項目又は「営業活動によるキャッシュ・フロー」以外の各表示区分に記載される取引に係る為替差損(益)である。」

どういうことか、こちらも簡単な具体例で考えてみます。

(前提)

当期の取引は期首に存在した外貨建貸付金(1$)を回収した取引だけとする。
前期末(期首)の売掛金の為替レートは1$=100円、回収時の為替レートは1$=90円とする。税金費用は無視する。

まず、営業活動によるキャッシュ・フローで何ら調整しない場合を考えてみると、以下のようになります。
 

上記からわかるように、為替差損益が生じた対象が営業キャッシュ・フロー項目でない場合は、調整を加えないと現金及び現金同等物の増減が正しく表示されないことになります。

そこで、税金等調整前当期純利益の一部として営業活動によるキャッシュ・フローを構成してしまっている貸付金に関連する為替差損益の影響を排除するため、営業活動によるキャッシュ・フローで調整を加える必要が生じます。

実際に、調整を加えてみると以下のように正しくなることがわかります。

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