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包括利益計算書の注記で税効果前の金額と税効果額が同じ方向になるのは?

前回に引き続き包括利益計の表示に関する会計基準についてです。まず、実際の開示例を一つ確認してみます。以下は2012年3月期の日本電気の開示例です。

設例1の例と比較すると、当期発生額と組替調整額の符号が一致している点が異なりますが、これは期中の時価の動き次第なので特に違和感はないのではないかと思います。

次に、同じく2012年3月期のファナックの開示例は以下のようになっています。

税効果前の金額が△359、税効果が同じ方向△31で、税効果考慮後が△390となっています。念のため連結包括利益計算書も掲載しておくと以下のようになっています。

また、2012年3月期にミクニの開示例は以下のようになっています。

今度はファナックのケースとは正反対の符号で、税効果前の金額が24、税効果が同じ方向52で、税効果考慮後が77となっています。連結包括利益計算書は以下のとおりです。

上記のような状況が実際に何故生じたのかはわかりませんが、どのような場合に生じるの可能性があるのかを考えてみることにします。

1.評価損に対する繰延税金資産の回収可能性が認められなくなった場合

単純化したケースで考えます。有価証券評価差額金に影響するその他有価証券は親会社が保有するA社株式のみであり、期首時点の評価損益は△100、期末時点の評価損益は△110であったものとします。なお、実効税率は40%とし、現時点で売却の予定はないものとします。
また、前期までは委員会報告第66号の会社区分が①であったが、今期は会社区分が②になったとします。この結果、前期までは評価損に対して計上できていた繰延税金資産が今期は計上できなくなったとします。

このようなケースにおいては、A社株式に対する税効果額等および関連する注記は以下のようになると考えられます。

上記から明らかなように、評価損が拡大傾向にあり、かつ、従来計上されていた繰延税金資産の計上が認めらなくなったような場合には、税効果調整前の金額と税効果額が同じ方向になることがありえるといえます。

2.法定実効税率に変更があった場合

こちらも単純化したケースで考えます。有価証券評価差額金に影響するその他有価証券は親会社が保有するA社株式のみであり、期首時点の評価損益は100、期末時点の評価損益は110であったものとします。なお、実効税率が今期40%から30%に変更になったものとします。

このようなケースにおいては、A社株式に対する税効果額等および関連する注記は以下のようになると考えられます。

上記から明らかなように、評価益が拡大傾向にあり、かつ、税率変更により従来計上されていた繰延税金負債の計上額が小さくなった場合に、税効果調整前の金額と税効果額が同じ方向になることがありえるといえます。

なお、評価損に対して繰延税金資産の計上が行われているケースで、法定実効税率が低下した場合にも同じ方向の影響が生じるということが考えられます。評価損が10拡大し、法定実効税率が40%から30%に変更されたケースを考えると以下のようになると考えられます。

この他、損失減少局面で、従来計上が認められていなかった繰延税金資産の計上が認められるようになったというようなケースも考えられますが、考え方は同様なので割愛します。

以上のように、税効果前と税効果が同じ方向になることはあり得るわけですが、そのようなケースが生じたら何故そうなっているかの確認は必要ではないかと思います。

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