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税務上の「のれん」とは?(その1)

今回は税務上の「のれん」についてです。

”税務上の「のれん」”という単語は、非適格組織再編などの処理を検討していると登場してきます。税務上の取扱いについては、特殊な分野であるため専門の税理士に確認することが多いですが、税効果などの会計処理に影響する”税務上の「のれん」”というものについては内容をある程度理解しておいた方がよいと思います。

そもそも、法人税法においては「のれん」というものの定義はありません。会計と税務は処理方法に差があるのが普通なので、会計上の「のれん」と区別するために税務上の「のれん」というのだと考えてしまいそうですが、実際には法人税法上は「のれん」というものが存在しないわけです。

では、税務上の「のれん」とは何かですが、法人税法定められている資産調整勘定と負債調整勘定が、会計上の「のれん」に類似した概念であるため、税務上の「のれん」と呼ばれるようになったということのようです。
なお、税務上の「のれん」が生じるのは、合併等の直前において営む事業及びその事業に係る狩猟な資産又は負債の概ね全部が移転する場合に限られているため、事業移転を伴わない特定の資産負債の移転行為からは税務上の「のれん」は発生しません。(法人税法施行令123条の10第1項)

以下で、資産調整勘定と負債調整勘定の概要を確認します。

1.資産調整勘定

資産調整勘定は、非適格合併等において交付した対価よりも受け入れた資産等の価額が小さい場合に生じる差額のことです。例えば時価100の資産等に対して120の対価を交付したようなケースで生じる差額20が該当します。
これは、いわば会計上の正のれんに近い概念といえると思います。

なお、上記に該当する差額がすべて資産調整勘定として認められるわけではなく、寄附金とされる部分は除かれることとされています(法人税法62条の8第1項)。なぜ、敢えて寄附金について述べられているかというと、寄附金の代わりに非適格組織再編が使用されることを防止するためです。これは、資産調整勘定は税務上5年にわたって損金に算入することができる一方で、寄附金は原則的に損金不算入となることによるものです。

寄附金の損金不算入を回避するために非適格組織再編までするのか?という感じもしなくはないですが、仮に対象金額が1億円であれば4000万円程度の影響があるわけなので、確かに規制されていなければ利用されそうではあります。

2.負債調整勘定

法人税法上、負債調整勘定には以下の三つが定められています。

①退職給与負債調整勘定

②短期重要負債調整勘定

③差額負債調整勘定

①退職給与負債調整勘定

退職給与負債調整勘定は、非適格合併等に伴い、被合併法人等から引き受けた従業者について、被合併法人等の退職給与債務を引き受けた場合に生じます。合併等の場合、合併法人等が被合併法人等の従業者の退職給与債務を引き受けるのが一般的なので、退職給与債務を引き受けた法人において退職給与負債調整勘定が計上されることになります。

②短期重要負債調整勘定

短期重要負債調整勘定とは、非適格合併等により、被合併法人等から移転を受けた事業にかかる将来の債務のうち、金額に重要性があるなどの要件を満たす債務の額を意味します。

ここでのポイントは「重要」なものに限られるという点です。つまり、移転を受けた事業に係る将来の債務のうち事業の利益に重要な影響を及ぼすものに限られます。具体的には、合併等の日から概ね3年以内に履行が見込まれるもののうち、非適格合併等による移転資産の取得価額の20%候額を超えるような、金額に重要性のあるものに限られます。

典型的なケースとしては、リストラ引当金(費用)や賞与引当金などが該当する可能性があります。なお、退職給与債務については上記①に含まれるので除外されます。

③差額負債調整勘定

差額負債調整勘定とは、非適格合併等の対価が、非適格合併等により被合併法人等から移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額に満たない場合の、その満たない部分の金額を意味します。資産調整勘定の場合と同様に考えると、時価100の資産等に対して80の対価を交付したようなケースで生じる差額20が該当します。
これは、いわば会計上の「負ののれん」に類似した概念といえます。

税務上の「のれん」は、資産調整勘定と三つの負債調整勘定の総称で、法人税法上は認められているのはこれら四つに限られるというのが今回のまとめです。

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