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損害賠償金の税務上の取扱い(その2)-不正行為による従業員等への損害賠償請求権は重加算税に注意

前回に引き続き損害賠償金(請求権)の税務上の取扱いについてです。今回は、税経通信2012年11月号に掲載されていた「賠償金等に関する最近の傾向と税務上の基本的な考え方」および「従業員による横領に対して損賠賠償請求する場合」という記事を参考に「税務調査等で従業員等の横領が発覚したような場合の取扱いについて確認していきます。

1.使用人に対する損害賠償金の益金算入時期

役員又は使用人に対して請求しうる損賠賠償金は、原則として不正経理が行われた事業年度の益金に算入する必要があるとされています。

これは、会社としてはかなりしんどい処理です。例えば、税務調査によって過去5年間にわたり行われたきた従業員の不正が行われてきた場合、5年前に益金の計上漏れが生じることになります。延滞税もかかってきますし、その分も含めて従業員等に賠償してもらうことを試みても、金額が多額になればなるほど回収が困難になるので、会社の持ち出しになってしまうと考えられます。

なお、前回も少し触れましたが、損賠賠償請求権の益金算入時期については法人税基本通達2-1-43で触れられていますが、これは「他の者から支払を受ける損害賠償金」についてのものであるので、役員や従業員に対する損害賠償金については適用はないとされています。

2.役員や従業員が行った不正が税務調査で発覚した場合に重加算税の対象になるか?

これは不正を行った者の地位や権限、内部統制の状況によって取扱いが異なります。

(1)取締役が不正を行っていた場合

取締役が不正を行っていた場合は、「会社の行為と同一視できるものと判断され、重加算税の対象になるものと考えられる。」とされています。

この点に関連して、取締役営業部長の行った架空仕入れに係る行為を会社の行為と同一視できるとして重加算税を賦課するのが妥当であるとした裁決事例(平22.12.1 東裁(法・諸)平22-116)が紹介されています。

この裁決理由も紹介されており、少し長くなりますが参考になるので引用しておきます。(税経通信2012年11月号「従業員による横領に対して損賠賠償請求する場合 Q6」より)

①取締役営業部長は代表取締役の全幅の信頼を受け営業部の責任者として重要な地位及び業務上の大きな権限を有していたこと

②取締役営業部長はその地位、業務上の権限を利用して本件架空仕入れの計上を行っていたこと

③各営業部を監督する立場にある代表取締役副社長が各営業部で作成される帳簿書類のチェックを行っていなかったこと

④本件架空仕入れの計上の原因となった取引に係る納品チェック、棚卸管理等の不備を代表取締役が長年にわたって容認していたこと等が認められること

⑤会社が納品の事実に係る商取引上通常行われているチェックを行っていれば、本件架空仕入れに係る取引の発生を容易に把握できたと認められること

(2)経理事務を担当する従業員が不正を行っていた場合

経理事務を担当する従業員の不正についても、「会社の行為と同一視できると判断され、重加算税の対象になるものと考えられる。」とされています。取締役が行った不正と経理事務を担当する従業員の行った不正では、私の感覚では相当重みに差があると思いますし、「会社の行為と同一視できる」というには程遠いような気がします。

しかしながら、現実問題として経理事務を担当する従業員の不正経理行為を会社の行為と同一視すべきとして重加算税を賦課することを適法と判断した採決事例(平17.6.29裁決 裁決事例集No.69 18ページ)が紹介されていました。

この裁決理由についても参考になるので引用しておきます。(税経通信2012年11月号「従業員による横領に対して損賠賠償請求する場合 Q7」より)

①従業員は請求人の経理事務を担う重要な地位にいたこと

②不正経理行為は請求人の課税申告に直接反映していること

③不正経理行為は長期に及び、現金出納帳などの確認をすれば容易に把握できたと認められるところ、会社はそれらの確認を行っていないこと

上記の役員及び従業員の裁決理由からすると、内部統制上相当の落ち度があった場合には重加算税を課せられる可能性があると言えそうです。逆に言えば、税務調査により従業員等の不正が発覚した場合に、会社の統制手続き上の不備を容易に認めるようなことはしてはならないということだと思います。

(3)工場の資材調達業務を担当する従業員が不正を行っていた場合

この場合は「工場の資材調達業務を担当する従業員の行った仮装行為は、会社の行為と同一視すべきではないと認められ、重加算税の対象とはならないと考えられる。」とされています。

ただし、この点についても重加算税の賦課決定処分が相当ではないとした裁決事例が紹介されていることから、税務調査で上記のような不正が発覚した場合には税務署は重加算税を賦課しようとすることがあるということになります。

裁決理由を要約すれば、当該従業員が職制上の重要な地位に就いたことがなかったことと帳簿の作成に関与していなかったことから一使用人にすぎず、かつ不正も私的費用の搾取を目的に独断で行ったものであったためということです。

内部統制上の不備については特に述べられていませんが、重大な不備が存在した場合には結論が変わるのかもしれません。

従業員等の不正は税金にも注意と覚えておく必要がありそうです。

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