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出る杭はもっと出ろ!

「機械との競争」(エリック・ブリニョルフソン著)-技術の進化が失業を加速する?

今回は、MITスローンスクールのエリック・ブリニョルフソン氏とアンドリュー・マカフィー氏の共著である「機械との競争」(日経BP社)で書かれていた内容についてです。

著者はこの本の中で、リーマンショック後の不況後GDPは7四半期の間に年換算で平均2.6%の成長率を記録し、企業収益も史上最高水準に達しているにもかかわら雇用が拡大しない現象、いわゆる雇用なき景気回復の理由についての見解を示しています。

著者は「雇用の喪失説」という説に立っています。この説は、端的にいえば、雇用が回復しないのは技術の進歩が速く人々がそれについていけていないからということのようです。

著者が自ら述べていますが、この「雇用の喪失説」は雇用なき景気回復の議論でも主流な説ではありません。むしろ、この説とは逆の停滞説が、専門家により一般的になされる説明の一つになっています。停滞説では、現在の状況はイノベーションを生み出す能力や生産性を高める能力が長期的に低迷しているためで、イノベーションの出現率が上がってテクノロジーが進化しない限り、経済は現在の不振から脱出できないとされます。

技術の進歩が速すぎのか、不十分なのかですが、この点について著者は2004年に出版された「新しい分業」という本と2010年にグーグルによって行われた実験にふれています。
すなわち、「新しい分業」ではコンピューターはルーチン化された仕事に向いていて、パターン認識などを必要とする複雑なタスクには向いていないとされています。
これに対して、2010年10月にグーグルは、完全自動運転車で全く人間の介入なしに米国の道路を1600Kmを走破したと発表しました。また、2011年1月には、翻訳サービス会社のライオンブリッジにより企業向けの試験運用が発表された機械翻訳ソフトウェアでは、オンラインで顧客が製品について質問し、外国人のカスタマーサービス係が回答する場合などに、ほどリアルタイムで正確な翻訳を提供できるそうです。これらはパターン認識などを必要とし、「新しい分業」ではコンピューターには向かないとされていたものです。

「新しい分業」が出版された2004年からグーグルが自動車の自動運転に成功した2010年までは、たった6年ですが、このような短期間での進化を説明する上で、同書では二つの法則が紹介されています。
①ムーアの法則
②チェス盤の法則

ムーアの法則はよく聞きますが、チェス盤の法則というのは聞いたことがありませんでした。チェス盤の法則とは、指数的な増加は人を欺くというものです。つまり、チェス盤の最初のマス目に1粒、2番目のマス目に2粒、3番目のマス目に4粒というように前のマス目の2倍の米粒を置いておくと、チェス盤の前半では、人々が予想できるレベルでの増加を示すが、チェス盤の後半に入る位になると人々の見通しを狼狽させるような増え方になるというものです。米粒でいえば最終的にはエベレストより高い米の山となるそうです。

そして、米商務省経済分析局が設備投資の対象に情報技術を加えたのが1958年で、この年をIT元年と仮定し、ムーアの法則のとおり集積密度が18か月ごとに倍増したとすると、32回倍増した年(=チェス盤の半分に到達した年)が2006年となるそうです。

つまり、これから当初人々が予想できなかったようなスピードで技術が進歩し我々を驚愕させるのではないかというのです。

MITの教授が書いているという点を差し引いて考えてみても、少し前まではチェスでは可能でも将棋では難しいと言われていたコンピューターソフトが将棋のプロ棋士を負かしたりしていることを考えると、イノベーションが不十分というよりも技術の進化が加速度的に早まっているという解釈の方が納得しやすいと感じます。

では、今のところ機械に人間が勝っているものは何か?この答えは意外でした。

それは、肉体労働だそうです。もちろん単なる力作業であれば機械のほうが勝っていますが、細かい運動機能が要求されるものについては、ヒト型ロボットがまだ原始的であるため人間が勝っているというのです。特に、看護師や配管工は1日中パターン認識能力や問題解決能力を要求される仕事とされています。

これから加速度的に技術が進歩することにより、従来であれば一部の産業で人間の仕事が機械に取って代わられるという現象が起きていたものが、広範囲に同時に同様の現象が生じる可能性があり、機械の方が人間よりも安上がりになることにより失業が増加していくという事態が近づいているのではないかとのことです。

既にチェス盤の後半に突入しているのであれば、10年後は今では想像できない技術などが生まれている可能性もあります。そんな中でも仕事をして生きていくためには、古い価値観にとらわれずに柔軟に対応していく必要がありそうです。

日々成長

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