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事業等のリスクに長時間労働を掲げても上場審査はパスできる?

2013年10月22日に上場予定の㈱システム情報という会社の「上場申請のための有価証券報告書」をみていたら、「事業等のリスク」に目を引く項目の記載がありました。

それは「⑥長時間労働と過重労働について」という項目です。内容は以下のようになっています。

システム開発プロジェクトにおいては、当初計画にない想定外の出来事が発生し、品質や納期を厳守するため長時間労働や過重労働が発生することがあります。当社では日頃より従業員の健康問題につながるような事象の発生を撲滅すべく活動を行っております。しかしながら、やむを得ない事情によりこのような事象が発生した場合には、システム開発の生産性の低下等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

上記の「このような事象が発生した場合」は「長時間労働や過重労働が発生」した場合を指していると思いますので、要約すれば、長時間労働や過重労働が発生した結果、開発の生産性が低下して業績に悪影響を及ぼす可能性があるというということになります。

疲れが溜まってくると生産性が落ちるというのは理解できるのですが、「事業等のリスク」に敢えて記載しなければならないほどのリスクがあると判断した理由が気になります。

タイトルが「長時間労働と過重労働について」となっていることからすると、品質や納期を厳守するため長時間労働や過重労働が頻繁に発生しているということなのかもしれません。
少なくとも法的には問題ない範囲での労働であるはずですが、このような記載があっても上場審査はパスできるのだと参考になりました。

「事業等のリスク」に長時間労働とか過重労働が記載されていることあるとは思っていなかったのですが、検索してみると既上場会社で数社事例があることがわかりました。

「長時間労働」で検索してみたところ以下の5社がヒットしました(検索期間2012年6月30日~2013年6月30日を決算日とする会社)。

  1. ㈱ゼロ(陸運業)
  2. TDCソフトウェアエンジニアリング㈱(情報・通信業)
  3. ㈱電算(情報・通信業)
  4. ㈱クレスコ(情報・通信業)
  5. ㈱ベルパーク(情報・通信業)

上記のとおり、業種としては情報・通信業が中心となっています。ちなみに、唯一の陸運業である㈱ゼロでの記載内容は、長時間労働に対する監督官庁による指導・監督の強化が強化されることで、コスト増による業績が悪化する可能性があるという内容になっています。

以下、情報・通信業4社の記載内容を確認していきます。

1.TDCソフトウェアエンジニアリング㈱

(10) 長時間労働と労務問題
提供するサービスや構築システムの社会性の高さ、またシステム開発の属人性の高さから、緊急時において長時間労働が発生する可能性があり、健康問題や労務問題につながる可能性があります。

個人差はありますが、緊急時が何カ月も続くというのでなければ、緊急時における長時間労働が健康問題や労務問題につながる可能性は相対的には低いと考えられます。敢えてこのような記載があることからすると、社内的には「健康問題や労務問題」がそれなりに生じているということなのかもしれません。

2.㈱電算

(9) 労務管理について
社員の勤怠管理や時間外勤務管理につきましては、労働基準法の規制が適用されます。当社では、個人別の就業時間管理及び部署別の時間外勤務申請管理等により労働時間を管理しております。また、毎月、部長職が部署別に時間外勤務時間に関する報告や時間外削減状況に関する報告を行い、長時間労働の削減を図っております。
 しかしながら、システム開発における当初見積り以上の工数の発生や予期せぬトラブルの発生等により法定内での長時間労働が連続することがあります。これにより、社員に健康被害等が発生した場合は、開発人員の欠員につながり、更なる時間外勤務時間の増加や納期遅延等が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

上記の事例では「法定内での長時間労働」と適法である点が強調されているのが特徴的です。特別条項付36協定の範囲内であっても3カ月位続けて長時間労働が続けば、健康被害等が生じる可能性は高くなってくるので、開発人員の欠員が生じる可能性は理解できます。

ただし、一人欠員が出た程度で大きな影響は出ないと考えられますので、経営成績及び財政状態に事業等のリスクに記載しなければならないほどの影響が生じるほどの欠員が生じる労働状況にあるということかもしれません。

3.㈱クレスコ

(7) 長時間労働と過重労働
当社企業グループが提供するサービスやシステム開発の体制やプロセスの構造的な問題、属人性の高さから、長時間労働や過重労働が発生し、それらを起因とした健康問題や生産性の低下などにより、経営成績等に影響が及ぶ可能性があります。

1.のTDCソフトウェアエンジニアリング㈱と同様の記載となっています。ここも記載が必要なほど「長時間労働や過重労働」が発生しているということなのかもしれません。

4.㈱ベルパーク

⑥店舗販売員の確保及び育成について
 当社の情報通信機器販売事業には、直接お客様と接する移動体通信機器の店舗販売員の人材確保が必要不可欠であります。このため、店舗販売員の新卒者の定期採用及び業務経験者の通年採用並びに教育研修等により人材の確保及び育成に努めております。しかしながら、移動体通信事業者の施策による長時間労働等の労働環境の変化などにより、退職者が増加し、予定どおりの人材の確保及び育成を行えなかった場合には、当社の業績等に影響を及ぼす可能性があります。

この事例は、長時間労働によって健康問題等が生じるというのではなく、従業員の定着率の低下や従業員の確保・育成が困難になって、業績に悪影響を及ぼすとしている点に特徴があります。
一言でいえば、労働時間が長くて従業員が定着しないのが問題だということのようです。

事業等のリスクにおいて長時間労働が言及されている会社で働く従業員の立場からすれば、会社として長時間労働の存在を認識しているということなので、何かあった場合には訴えやすいというメリットがあるかもしれませんが、「上場会社」という建前からすれば、記載しなければならないほどのリスクがある状態が本来はまずいのではないかと考えられます。

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