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条文の読み方(その3)-「遅滞なく」「直ちに」「速やかに」

今回は条文の読み方(その3)で「遅滞なく」、「直ちに」、「速やかに」の使い方を確認します。今回も「条文の読み方」(法制執務用語研究会)を参考にしています。

用途

「遅滞なく」・「直ちに」・「速やかに」はいずれも「すぐに」という意味で用いられます。

使用上のルール

上記のとおり「遅滞なく」・「直ちに」・「速やかに」いずれも「すぐに」という意味で用いられますが、求められる時間即時性のニュアンスが異なります。
時間的即時性の度合いが強いものから順に並べると以下のようになります。

  1. 直ちに
  2. 速やかに
  3. 遅滞なく

(1)「直ちに」
上記のとおり、三つの中では最も時間的即時性が強いもので、「一切の遅滞が許されないという強い趣旨で用いられます」(条文の読み方)。

そのため、人命に影響するような条文で用いられることが多いようです。ためしに、労働基準法で「直ちに」を検索してみると該当事項はありませんでしが、一方で労働安全衛生法では以下の条文で「直ちに」が使用されていました。

(労働安全衛生法)
第二十五条  事業者は、労働災害発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させる等必要な措置を講じなければならない。

やはり、労働者の身体に危険が及ぶような場面に適用される条文で「直ちに」が使用されていました。

なお「直ちに」は「時間的即時性というよりも、通常の場合にとるべき一定の手続きを取らないで、とか、何らの条件も付けないで、という趣旨で用いられる」こともあるので、そのように使われている可能性も考える必要があります。

(2)「速やかに」
「速やかに」は時間的即時性が三つの中で中間に位置するものです。「直ちに」が今すぐに、「遅滞なく」は後述するように正当な、あるいは合理的な理由があれば遅れが許されるというニュアンスであるのに対して、「速やかに」はその中間というだけで具体的にどれくらいの時間的即時性が求められるのかは曖昧な部分があります。
そのため、『「直ちに」や「遅滞なく」が用いられた場合、その懈怠は義務違反とされることが多いのに対して、「速やかに」については訓示的な意味を持つにとどまることが多い』とされています。ただし、「速やかに」が使用されていても罰則が設けられている例も多くあるとのことなので、注意が必要です。

労働安全衛生法で「速やかに」を検索したところ、以下の条文がありました。

(文書の交付等)
第五十七条の二
2  通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、前項の規定により通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により、変更後の同項各号の事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方に通知するよう努めなければならない。

上記は「努めなければならない」と努力義務になっていることから、罰則が設けられていない例となっています。

(3)「遅滞なく」
「遅滞なく」は、三つの中では時間的即時性の度合いが最も弱いとされており、時間的即時性は求められるものの、正当な、あるいは合理的な理由に基づく遅れは許されるものと解されています。いわば、「事情の許す限りすぐに」というニュアンスです。

労働基準法から一つ例をピックアップしてみます。

(退職時等の証明)
第二十二条  労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

「遅滞なく」が用いられている場合には、その懈怠が義務違反として罰則の対象となることが多いとされており、上記の例のの場合も30万円以下の罰金(労働基準法120条1号)とされています。

「直ちに」と「遅滞なく」は守らないと罰則の対象となる可能性が高いという点は覚えて置いた方がよさそうです。

日々成長

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