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税理士法人の補助スタッフに対する裁量労働制の適用で税理士法人側が敗訴

T&A master No.530に”税理士法人の労務トラブル、裁判事例からみる留意点”という記事が掲載されていました。

最近では税理士法人の労務トラブルが裁判所に持ち込まれることが多くなってきたとして、同記事では税理士法人に勤務する税理士補助スタッフ(税理士の資格なし)に専門業務型裁量労働制が適用できるか否かで争われた事案が紹介されていました。

この事案では、裁判所は裁量労働制の適用を認めず、税理士法人側に未払残業代と賦課金の支払が命じられ、税理士法人側が敗訴しました。この事案は高裁で係争中とのことで、事案の詳細が不明な部分も多いのですが、補助スタッフに専門業務型裁量労働制を適用しようとするのは厳しいのではないかと思います。

専門業務型裁量労働制は、現在適用業種の拡大が検討されていますが、現行法では19業務に限定して適用することが認められています。その中の一つに「税理士の業務」があります。

ここでいう「税理士の業務」とは何かですが、「税理士の業務」とは、「法令に基づいて税理士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、税理士法(昭和26年法律第237号)第2条第1項に規定する税務代理又は税務書類の作成がこれに該当するものであること。」(厚生労働省HPより)とされています。
この記事で紹介されていた事案でも「税理の業務」は上記であることが判示されています。加えて、”「税理士の業務」は、税理士となる資格を有し、税理士名簿への登録を受けた者自身を主体とする業務であると判示しています。”

ここで争われた税理士補助スタッフ(税理士の資格なし)というのが、税理士試験には合格しており単に登録費用や年会費節約のために税理士登録されていなかった者なのか、税理士科目合格者であったのかは明らかではありませんが、仮に後者であれば専門業務型裁量労働制の適用は厳しいように思います。
一方で、前者であれば最終的な印鑑は税理士登録している方のものになるにせよ、自分の裁量で業務を行えているという可能性はあります。

この点について、「裁判所は、税理士ではない税理士法人の従業員が税理士法人の内部において、税理士または税理士法人の指示により、税理士又は税理士法人が行うべき税務書類の作成等の業務を、単なる補助者にとどまらない立場で事実上行うという場合もあり得ると指摘」しているとのことです。
税理士法をよく理解していないのですが、税理士法上は特に問題はないのだろうかという点は気になります。

そして、この事案においては、「税理士以外の従業員による事実上の税務書類の作成等の業務を裁量労働制の対象と認めるためには、その業務が税理士又は税理士法人を労務の提供先として行われるとともに、その成果が税理士又は税理士法人を主体とする業務として反映されることが必要である」ところ、税理士法人のグループには税理士法人とコンサル会社が存在し、従業員のほとんどは双方に雇用され、いずれの業務であるかが明確に区分されていなかったことや、給与の支給時に支払元がどちらであるかが明確にされていなかったことなどから、裁量労働制の適用は認められないとされたとのことです。

個人的には、業務の帰属が明確であるかどうかはあまり問題ではないように思います。前述のとおり税理士として登録可能な状態にある者については議論の余地はありますが、基本的には、専門業務型裁量労働制の適用業種が限定列挙であることからすれば税理士登録していない者に専門業務型裁量労働制の適用は認めるべきではないと思います。

最後にこの事案では、裁判所から付加金の支払命令も出ていますが、法令の解釈を誤ったことに起因するものであり、悪質ではないとして付加金は20万円(未払残業代は約200万円)にとどまっています。

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