閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

法人税の収益計上基準の原則は「引渡基準」

法令の解釈に際しては、過去の改正の経緯を理解していないと、条文が意味している内容を正しく理解することが難しいことがあると考えられます。

税理士の朝長英樹氏が執筆した「法人税法における収益の計上基準」という解説記事がT&A master No.662に掲載されており、過去の税法改正の経緯等が詳しく記載されていました。

この記事の冒頭において、法人税法上の収益計上基準について以下のように述べられています。

法人税法における収益の額の計上基準の原則がどのようなものかということに関しては、「権利確定主義」を採っているとする見解があったり、「実現主義」や「発生主義」を採っているとする見解があったりするなど、かなり混乱した状況となっているが、昭和40年の法人税法22条(各事業年度の所得の金額の計算)の制定及び昭和44年の法人税基本通達2-1-1(たな卸資産の販売による収益の帰属の時期)等の制定に当たって、どのような判断がなされてこれらの定めが設けられたのかということを当時の資料から正確に辿れば、それらの見解とは異なり、「権利確定主義」等は採らないこととし、「引渡基準」を採ることとしたものであることが明確である。

しかしながら、実際には法人税法における収益の計上基準について、「権利確定主義」が妥当するという見解が判例の一部にも見受けられるとのことなので、実際必要とする機会があるかどうかはわかりませんが、必要な場合に適切な主張ができるように過去の経緯をきちんと理解しておくことは有用と思われます。

1 法人の「所得の金額」が意味するもの

法人の「所得の金額」は、現行の法人税法22条1項では益金から損金を控除した金額とされていますが、そもそもは純資産の増加額と捉えられていたとのことです。

これは昭和40年の法人税法の全文改正前において、例えば総益金については「総益金とは、法令により別段の定めのあるものの外資本の払込以外において純資産増加の原因となるべき一切の事実をいう」という国税庁の解釈が示されており、昭和40年の改正にあたり「資本等取引以外の取引で純資産の増減の原因となるべきものに係る経済的価値の増加」というような益金の額の定義が設けられることが当初予定されていたものの、最終的には法人税法22条の規定から明らかであるという理由でこのような定義は別途設けられなかったとのことです。

つまり、基本的な考え方は昭和40年改正前から変わっていないので、法人税法における所得の額は純資産の増加と理解した上で、規定を解釈する必要があるとされています。

そういった意味ではIFRSの考え方に近いのかもしれません。

2 収益の計上基準はどのように変化してきたか?

昭和40年前の法人税法においては、収益の計上時期について定めはなかったものの、原則は「権利確定主義」によるものと解されていたとのことです(「所得税法及び法人税法の整備に関する答申」)。

上記の答申の内容については、公益財団法人日本租税研究会のHPで昭和38年12月の所得税法及び法人税法の整備に関する答申で確認できます(P15 4所得の発生時期(1))が、この答申において「法人税法基本通達「249」は、本文における権利確定主義のただし書として、商品、製品等の販売については引渡し基準を認めている」と記載されており、この時点においては、原則「権利確定基準」、例外「引渡基準」という位置づけとなっています。

なお、この答申において、引渡基準を適用する場合に、引渡時期を発送時期にすべきか検収時期とすべきかについては、いずれも認めるとされています。また、売手と買手の会計処理の差異によって時間的空白が生じることはやむをえないと述べられています。

上記の法人税基本通達249は、以下のようなものであったとのことです。

(売買損益の帰属の時期)
二四九 資産の売買による損益は、所有権移転登記の有無及び代金支払の済否を問わず売買契約の効力発生の日の属する事業年度の益金又は損金に算入する。但し、商品、製品等の販売については、商品、製品等の引渡の時を含む事業年度の益金又は損金の額に算入することができる。

昭和40年以前の税務の実務は全く知りませんでしたが、上記からすると、昭和40年の改正前は、例えば土地の売買契約をした場合、所有権移転登記や代金決済にかかわらずその時点で収益認識が必要であったということになります。今からするとそんなことないだろうと考えてしまいますが、少なくとも昭和40年の改正前は「権利確定主義」が取られていたということが事実であるようです。

この考え方がいつ変化したかですが、これは昭和44年の改正時とされています。上記の法人税基本通達249は、この改正時に棚卸資産と固定資産にわけて以下のように定められたとのことです。

(たな卸資産の販売による収益の帰属の時期)
2-1-1 たな卸資産の販売による収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する。

(固定資産の譲渡による収益の額の帰属の時期)
2-1-3 固定資産の譲渡による収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する。ただし、法人が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日以後引渡しの日までの間における一定の日にその譲渡による収益が生じたものとして当該日の属する事業年度の益金の額に算入したときは、これを認める。

上記から、「権利の確定」ではなく「引渡し」が収益の額の計上基準の原則とされることとなったのが明確でありますが、特に上記2-1-3では「契約の効力発生の日以後引渡しの日まで」というように、効力発生と引渡しは別物として定められています。したがって、一部に見られる「引渡基準」と「権利確定基準」は同じであるという説は誤っていることが明白であるとこの記事では解説されていました。

なお、会計上は収益認識について実現主義といわれますが、法人税法上も昭和40年の改正時に「当該事業年度において実現した収益の額」というような文言に改正することも検討されたものの、会計上の実現と税務上の実現が一致するという保証はないため、最終的に「実現」という表現は用いられなかったとのことです。そのため、法人税法上の引渡基準と会計上の実現主義は同じになることが多かったとしても必ずしもイコールではないという関係にある点は注意が必要です。

また、請負による収益の帰属時期についての通達も昭和44年改正で新たに追加されたもので、請負についても「物の引渡を要する請負契約にあってはその目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しない請負契約にあってはその約した役務の全部を完了した日の属する事業年度の益金の額に算入する」と引渡基準が原則とされています。

というわけで、法人税法における収益の計上時期は「引渡基準」によっているということで理解しておくとよいのではないでしょうか。

関連記事

  1. 収益認識基準-法人税と消費税で取扱いに差

  2. 平成30年度税制改正を確認-法人税(その1)

  3. 在宅勤務手当等の支給増で所得拡大促進税制適用可となる可能性?

  4. 棚卸資産の評価方法を遡及修正して変更した場合の税務上の取扱い

  5. 損害賠償金の税務上の取扱い(その1)-原則的な考え方

  6. 平成24年税制改正(その1)-法人税及び租税特別措置法




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,847,926 アクセス
ページ上部へ戻る