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特定退職金共済とは何ですか?

適格退職年金の廃止後、中小企業退職金共済制度(中退共)に移行した中小企業が多く、上場会社の子会社などでも利用されていることがあるので中退共の認知度は比較的高いと思いますが、たまに「特定退職金共済」というものに遭遇することがあります。

中退共制度は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営しているものです。

中小企業退職金共済事業本部のHPによれば、「中退共制度をご利用になれば、安全・確実・有利で、しかも管理が簡単な退職金制度が手軽に作れます」とされています。一般事業会社が「安全・確実・有利」という表現を用いるとかえって怪しい商品のように思われそうですが、国の制度なのでこのような表現も堂々と使えるということなのだと思われます。

一方、特定退職金共済制度とは何かですが、こちらは各商工会議所等が運営する共済制度で、所得税法施行令第73条の規定により税務署長(国)の承認を受けることによって、掛金の損金算入等税務上の優遇を受けることが可能となっています。

退職金はなによりも安全性が優先されそうですので、国が運営する中退共という制度がある中で、特定退職金共済に加入するメリットはなにかという点が当然の疑問として生じます。

そこで、中小企業退職金共済制度と特定退職金共済制度を比較してみると以下のとおりとなっていました。

①加入資格

中小企業退職金共済制度・・・中小企業基本法に定める中小企業に該当すること。例えば製造業を営む会社の場合、常時使用する従業員数が300以下または資本金3億円以下であること。中小企業基本法の定める中小企業の定義に従うと、日本の会社の99.7%は中小企業に該当しますので、ほとんどの会社で利用可能ということになります。

特定退職金共済制度・・・各商工会議所の定める地域で事業を営む事業主となっています。いくつかの制度を確認してみましたが、商工会の会員であることは要件とはされていないようです。したがって、上記のとおり、確率的には中退共をほとんどの会社で利用できるわけですが、中小企業の要件から外れた場合であってもこちらは使用することができます。

②掛金

中小企業退職金共済制度・・・毎月の掛金は5千円~3万円であらかじめ定められた16種類の掛金額を選択することができます(ただし、短時間労働者の場合は2,000円、3,000円、4,000円も選択可能)。

特定退職金共済制度・・・従業員一人につき1口(1,000円)から最高30口(30,000円)の範囲内で加入可能です。

いずれも上限は月額3万円ですが、特定退職金共済制度では月額5000円未満の掛金も選択できること、1000円刻みで口数を選択できるという点で、掛金の選択の幅は広いといえます。例えば、今後パートやアルバイトの採用が難しくなっていくのであれば、少額の退職金制度を導入するというようなことにも使える可能性はあります。

③返戻率

中小企業退職金共済制度・・・加入期間1年の場合30%、5年の場合101.3%、10年の場合105.4%、20年の場合111.1%

特定退職金共済制度・・・加入期間1年の場合96.7%、5年の場合98.7%、10年の場合101.2%、20年の場合106.5%

1年でみると特定退職金共済制度が圧倒的に有利ですが、加入期間5年以降は中退共の方が明らかに有利な結果となっています。特定退職金共済制度も生命保険会社に運用が委託されているとはいえ、国の制度としての規模の経済と事務手数料が1口あたり25円かかることとから長期で考えると無視できない差が生じるということではないかと思われます。

④新規加入時の助成金

中小企業退職金共済制度・・・さすが国の制度だけあり、中退共制度に新たに加入する事業主に、加入後4か月目から、掛金月額の2分の1(上限5,000円)を1年間国から助成を受けることができます。

特定退職金共済制度・・・上記のような助成制度はありません。

なお、両制度とも、新規加入時の会社の申し出により、1年以上勤務している社員について、加入前の過去の勤務期間を最高10年(1年単位)まで通算することができる制度が設けられています(もちろん相応の過去分の掛金の拠出が必要となります)。

⑤併用の可否

制度的には中小企業退職金共済制度と特定退職金共済制度を併用することは可能とされています。そのような企業があるかはわかりませんが、双方の制度を最大限利用すれば、企業型確定拠出年金(企業年金制度がない場合)の拠出限度額である月額55,000円を上回る設計が可能ということになりそうです(一方が中小企業のための制度なので多少優遇されているということなのかもしれません)。

やや古いデータとなりますが、労政時報3867号(2014年5月9日号)の「退職給付制度の最新実態」によれば、退職一時金制度の支払い準備形態の回答結果は、社内準備64.5%、中小企業退職金共済制度46.5%、特定退職金共済制度7.5%との調査結果がありました。

前述の通り、長期的な返戻率をみると中退共を選択するのが当然といえますので、上記の結果も納得です。また、企業型確定拠出年金も一般的になりつつある中で、新たに特定退職金共済制度に加入するという選択肢をとる可能性は低いように思いますが、こんな制度もあるというのは頭の片隅においておいてもよさそうです。

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