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従業員等の慰安旅行費用が交際費等にあたらないとされた判決

従業員等の慰安旅行費用が福利厚生費としてして損金算入できるのか、交際費等として取り扱われるのか、あるいは給与課税されるのかという点は、よく問題となりますが、T&A master No.708の最新判決研究において、筑波大学名誉教授・弁護士の品川芳宣氏が福岡地裁で平成29年4月25日に下された事案を解説していました。

この事案では、国が交際費等にあたるとして更正を行いましたが、会社はその取り消しを求めで本訴を提起し、判決では「交際費等」とは認めがたいとして会社の主張が認められています。

まず、原告(会社)は、養鶏事業、食肉食料品の加工等を目的とする株式会社で、資本金6億円、年商536億円、従業員1185人という企業で、原告を含むグループ企業10社を併せると年商1,214億円余、従業員数約3000人という会社とのことです。

同社は、各事業年度(平成20年3月期から平成24年3月期)の最終月(3月)に、A市所在の大型リゾートホテルで、従業員に対して、日帰りの「感謝の集い」を開催し、当該開催に係る費用を福利厚生費として処理し、申告を行ったとされています。

この「感謝の集い」には、会社の役員及び従業員並びにグループ企業の事業主等(以下「協力会社等」)が参加し、参加者にはコース料理(料理は1万2千円)が提供され、プロの歌手や演奏家のコンサート等が開催されたとのことです。

これに対して処分行政庁は、平成25年5月27日付で、本件福利厚生費が「交際費等」に該当するとして、当該費用を損金不算入とする各更生等をしました。

会社は、これを不服として、国に対して、それらの取り消しを求めて本訴を提起しました。

争われた5事業年度において、問題となった慰安旅行への参加率は概ね73%前後で、1人当たりの費用は最高で2万8726円(平成20年3月期)、最低で2万1972円(平成24年3月期)となっています。日帰りの社員旅行費用と考えると著しく高額という感じではしませんが、上記のような「感謝の集い」を忘年会のようなものととらえると、1人当たり2万円を超える水準は、社会通念上「通常要する費用」の範囲を超えるのかといわれると、たしかにやや高額かなという気はします。特に、同社の場合は参加者が約1000名となっていますので、当該イベントの費用は2000万円を超えることとなり、国側としては交際費等に該当すると判断しようとするというのは理解できます。

国側の主張としては、以下の二つから当該費用が「交際費等」にあたると主張しました。

①本件行事は、会社及び協力会社等の全従業員を対象としており、これらの従業員は措置法61条の4第3項の「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に該当することから、「交際費等」に該当する支出の相手方になる。

②平日の昼の時間帯に、開演から終了まで4時間ないし4時間50分という比較的短い時間で行われた慰安行事に費やされた費用としては極めて高額であり、法人が費用を負担して行う福利厚生事業として社会一般的に行われていると認められる行事の程度を著しく超えていることから、措置法61条の4第3項1号の「通常要する費用」の範囲を超えている。

これに対して会社は以下の点から本件行事に関する費用が「交際費等」にはあたらないと主張したとのことです。

①本件行事は、X社及び協力会社等の全従業員に受益の機会が保障されたものであって、特定の一部の従業員を対象としたものではない。したがって、本件行事にかかる費用は、福利厚生費に当たり、「交際費等」にはふくまれないというべきである。

②仮に、国の主張するように、福利厚生費について、「通常要する費用」を超える場合には「交際費等」に含まれるとしても、本件福利厚生費は、「通常要する費用」の範囲内であると認められる。すなわち、福利厚生費が「通常要する費用」の範囲内であるか否かについては、実際の支出に即して、その目的達成との関係において通常要する費用かどうかという観点から、行事の規模、開催場所、参加者の構成、飲食等の内容、1人当たりの費用額、会社の規模を判断要素として判断すべきであって、実際の支出の目的達成とは無関係に、抽象的一般的に判断すべきではない。
 本件行事については、本件行事の目的が従業員に対して感謝の意を表するとともに、労働意欲の向上を図ることなどにあって、1000人を超える従業員全員を一同に集める必要があること、工場での操業を2日以上停止させることがてきないことに照らせば、上記判断要素のどの点についても「通常要する費用」の範囲に含まれるというべきである。
 
上記の主張に対し、裁判所が認定したとする事実を要約すると以下のとおりです。
①会社は平成12年、累積赤字約48億4000万円、固定化債権105億円、借入金171億円を有し、債務超過であったが、代表者甲が就任後、2年で累積赤字を解消し、その後、グループ会社も全て黒字化し無借金経営とした。

②会社の代表者は、「倒産すると言われ続けた会社で、私を信じ、頑張り続けた従業員に報いてやりたいという強い思いから、従業員に対する感謝の気持ちから」、また、従業員のモチベーションアップのため、会社創立40周年(平成18年)を機に、年1回の頻度で「感謝の集い」を開催することとした。

③会社の売上は、平成20年3月以降、ほぼ順調に増加傾向にあり、平成26年11月には、ブロイラー生産販売で国内トップシェアを持ち、グループ全体で売上1200億円超を記録すると報じられるまでになった。

④会社の代表者は、従業員全員の気持ちを一つにまとめるためには、約1000人の従業員が一同に会することが必要であると考えたが、グループ会社の工場や事業所は九州各地に点在しており、1000人規模の従業員を一同に収容できる会場で、かつ、本社に近い会場は、本件ホテルのみであった。

⑤会社の工場は年間300日稼働させており、全工場の稼働を2日停止すると、市場や消費者に影響を及ぼすことになること、また、従業員の6割以上が女性であり、2日間家を空けることはできないとう事情があった。

⑥⑤から宿泊を伴う慰安旅行は困難であると考え、日帰り慰安旅行等言う形態で行うこととし、従業員は九州各地から、開催当日の朝(例えば午前8時)に現地を本件ホテルに向けて出発し、行事終了後各地に戻っている。

⑦行事に際して配布された小冊子には「ありがとうのこころをあなたに 株式会社X」と記載されており、従業員約1000名が参加し、各事業年度ともコース料理(1万2000円)及び飲み物が提供され、プロの演奏家による演奏が行われ、午後3時又は3時50分に閉会している。

⑧本件行事は、会社の従業員にとって「年1度のかけがいのない楽しみであり、会社が一体となって組織としての結束力を高め、社長の感謝の心を感じ、それに対し全従業員が感謝の心で応え明日の勤労意欲の向上に向かう唯一の機会」であると理解されている。

⑨本件行事の成果として、従業員は、これからもX(グループ)で働くぞと労働意欲を盛り上げることができている。

⑩関東、関西へ1000人規模での慰安旅行を検討したが、移動が困難であり、県内で1泊2日の慰安旅行を実施したとすると3万8240円費用がかかるものの、コースの中に目玉となる部分が入れられない。

これらの事実を認定したうえで、本件福利厚生費が「交際費等」に該当するかについて、以下のように判断したとのことです(要約)。

①「交際費等」の損金不算入の出資は、本来必要経費の範囲を超えた冗費、濫費を生ずる弊害を防止し、資本充実、蓄積等を図るとともに、交際費等を徒に支出するならば、公正な取引を阻害し、公正な価格形成をゆがめることになるため、これを防止する趣旨であると解される。

②措置法61条の4第3項が、「交際費等」から「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」を除外したのは、従業員も「事業に関係ある者等」に含まれるものの、このような費用は福利厚生費として法人が負担するのが相当であり、冗費・濫費抑制の趣旨に反しないからであると解される。そして、社会通念上、福利厚生費として認められる範囲を超えているかどうかは、当該法人の規模や事業状況等を踏まえた上で、目的、参加者の構成、開催頻度、規模・内容、効果、参加者1人当たりの費用等を総合的に勘案して判断するのが相当である。

③本件行事は、従業員にとってある程度の非日常を有する場所(大型リゾートホテル)への移動の要素を含むとともに、また、全従業員が一堂に会し、特別のコース料理を共に味わい、ライブコンサートを楽しむという非日常的な内容を含むものであって、従業員全員を対象とする「日帰り慰安旅行」であったといえる。

④従業員の一体感や会社に対する忠誠心を醸成して、更なる労働意欲の向上を図るためには、従業員全員において非日常的な体験を共有してもらうことが有効、必要であると考えられる。

⑤従業員の女性比率の高さ等を勘案し、全員参加可能な慰安旅行の日程を考えると、宿泊を伴う慰安旅行は現実的ではなく、日帰り旅行にせざるをえないところ、会社の所在県内または近隣の観光地を目的地とした日帰り旅行では、非日常性に乏しく、慰安目的を十分に達成するのは困難である。意味のある行事としては、従業員の移動の負担を可能な限り軽減するとともに、行事の内容として、特別な食事や質の高い娯楽を等級の高い場所で提供するという点において非日常的要素を盛り込むという形態以外では企画が困難であったと考えられる。

⑥1000人程度が一堂に会することが必要であったことから、収容可能な会場として、大型リゾートホテルとしたことはやむを得ない。

⑦さらに、本件行事参加するするための従業員の移動時間は往復3時間ないし6時間に及ぶことなどを考慮すれば、県外への旅行等に代わる非日常要素として、大型リゾートホテルにおける特別のコース料理やプロの歌手や演奏家によるライブコンサート鑑賞を含めることは、必要性、相当性があったものと認められ、Xのような事業規模を有する優良企業が年1回の頻度で行う福利厚生事業として社会通念上一般的に行われている範囲を超える者であると認めることは困難である。

⑧1人当たりの費用は2万1972円ないし2万8726円であること、年1回の開催であること、移動時間を含めると約8時間から11時間をかけておこなわれる行事であることに照らせば、通常要する費用を超えるものとは認めがたい。

⑨参加率は各年度とも70%を超えており、Xの業績の推移および従業員の本件行事に対する捉え方から、一体感や忠誠心の醸成等の目的は十分に達成していると認められる。

以上から当該行事に要する費用が社会通念上福利厚生費として認められる程度を越えているものと認めることは困難であるというべきであり「交際費等」に該当するとは認めがたいと判断したとのことです。

従業員としても1泊2日であまり盛り上がらない社員旅行にいくなら、自分では行かないようなレストラン等でおいしいものを食べた方が、効用は高いということは十分あり得ますので、参考になる判例だと思われます。

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