閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

個人事業者の接待交際費、必要経費か否かの分岐点とは?

個人事業主の場合、接待交際費については法人のように損金算入の限度額というものは定められていません。したがって、適切な接待交際費である限りにおいて無制限に損金算入が認められるということになります。

個人事業主の接待交際費は無制限だからというようなことを言う人もいますが、なんでもかんでも接待交際費ととして必要経費として認めてもらえるわけではありません。

これに関連し、T&A master No.709に個人事業主の接待交際費にかかる最近の裁決事例が掲載されていました。

この裁決事例の事案で、納税者が事業所得を得ていた事業は、飲料水の販売業に顧客を紹介するA紹介事業、玄関マット等のレンタル物品や事務用品の販売業者に顧客を紹介するB事業、パチンコ店に自販機を設置し、その自販機設置業者から自販機売上高に対応した手数料を受け取る事業であったとされています(以上まとめて「本件事業」)。

「所得税決定処分等の異議申立てのなかで納税者は、本件事業の必要経費と主張する領収書の一覧表を提出したものの、原処分庁が事業の遂行上必要であるとは認められるものではないとして、接待交際費を含むすべての必要経費として認めなかったことから、納税者が審査請求」を行ったとのことです(T&A master No.709「個人事業者の接待交際費、裁決でみる必要経費の分岐点」)。

納税者が審査請求のなかで主張した主な交際費は以下の7つとのことです。

  1. 取引先等との懇親会参加費や取引先の開店祝い
  2. 取引先との飲食費(飲食店等に対する支出)
  3. 本件紹介事業の顧客の子供等が通う学校へ寄贈した制服など
  4. B紹介事業の顧客等が参加したゴルフコンペに係る費用
  5. 納税者の前所属先が開催した会議にOBとして参加した際の飲食費等
  6. 本件紹介事業の顧客に対する開店祝いの花代
  7. B紹介事業に関するディナーショーに係る支出

さて、最終的に上記のうちいくつかは必要経費として損金算入が認められることとなったわけですが、どの項目の損金算入が認められたかを予想してみて下さい。

答えの前に、国税不服審判所の判断過程を確認すると、まず、必要経費に算入できる「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所得税法37条1項)について、単に業務と関連があるというだけでなく、客観的にみてその費用が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務遂行上必要なものに限られると解釈したとされています。

さらに、家事関連費の主たる部分が業務遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる一定部分に限ってこれを必要経費にすることが認められているということを踏まえると、所得税法上は明確に事業場の経費とはいえないものは、原則として必要経費としないこととしていると解釈したとのことです。

この観点から判断した結果、審判所が損金算入を認めたのは、以下の三つでした(金額は平成21年から26年の合計額)。
4.B社紹介事業の顧客が参加したゴルフコンペに係る費用(177万246円)
6.本件紹介事業の顧客に対する開店祝いの花代(3万750円)
7.B紹介事業に関するディナーショーに係る支出(363万5,613円)

個人的にまず注目したのは「2.取引先との飲食費(飲食店等に対する支出)」の損金算入が認められていない点です。認められていない理由は、支出の主たる部分が本件事業の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できないためとのことです。

争われた金額がいくらだったのかは記載されていませんが、取引先との飲食費は、個人事業者の接待交際費の主なものではないかと思われるところ、上記の理由のみで必要経費として認められないのであれば、接待交際費というものの性格から必要経費であること認めてもらうのは結構難しいということになってしまうのではないかと思います。

紹介業という点を踏まえて、「取引先」が「販売業者」のみを意味しているのであれば、紹介手数料を得るために必要とはいえないということも理解できなくはありませんが、手数料を得るために顧客となる側を接待したというものまで必要経費として認められなかったということだと厳しいと思います(もっとも、潜在的な顧客を接待したという名目で私的な飲食費を必要経費として損金算入しようとするケースがでてくることも想定されるので、課税当局としては認めたくないというのも理解できます)。

必要経費として認められなかった残りのものの理由を先に確認しておくと、「1.取引先等との懇親会参加費や取引先の開店祝い」については、領収書の提出がなく支出の事実も確認できなかったためとのことですので、仕方がないといえます。

「3.本件紹介事業の顧客の子供等が通う学校へ寄贈した制服など」及び「5.納税者のかつての所属先が開催した会議にOBとして参加した際の飲食費等」については、1.と同様、支出の主たる部分が本件事業の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できないためとのことです。取引先との飲食費に比べると、一般的には事業への関連性はより低いと思われますので、取引先との飲食費が認められないのであれば、認められる可能性は低いと考えられます。

では、一方で必要経費として認められたものはどのような理由があったのかですが、「4.B社紹介事業の顧客が参加したゴルフコンペに係る費用」については、ゴルフ参加者にB紹介事業の顧客やB紹介事業の契約先事業者のブロック長が含まれていることなどから、ゴルフコンペは納税者を含めたB紹介事業に関係する者の関係強化を目的として実施されたものであると認定されたとのことです。

次に、「7.B紹介事業に関するディナーショーに係る支出」については、「ディナーショー参加者は主にB紹介事業に関する取扱商品を利用していない者であること及びそのディナーショーにおいてB紹介事業に関する取扱商品が説明されていることからすると、そのディナーショー開催目的は納税者が行うB紹介事業の新規顧客開拓及び知名度の拡充を図ったものであると認定」したとのことです。

6.は割愛しますが、上記からするとイベントものは事業関連性を説明しやすいので、参加者等が明確であればなんとかなりやすい一方で、取引先との飲食費は、少なくとも接待の経緯、目的、期待する効果なんかを記載した資料などがないと「支出の主たる部分が事業の遂行上必要」とは認めてもらえない可能性が高くなるといえそうです。

個人事業者の方は注意しましょう。

関連記事

  1. ハズレ馬券が経費として認められました-大阪地裁判決

  2. 社員旅行費用の税務上の取扱い

  3. 扶養控除控除等申告書の電子保存も可能

  4. 請求書が複数枚ある場合の専門家報酬の源泉徴収は?

  5. 未払残業代の税務処理

  6. 重加算税の対象となる「特段の行動」とは




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,838,697 アクセス
ページ上部へ戻る