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税理士事務所の事業承継にあたり営業権の対価が争われた事案

T&A maseter No.716に「税理士事務所の事業承継、営業権の対価をめぐり争い」という記事が掲載されていました。ここで取り上げられていた事案は、亡税理士の相続人(原告)が顧問先を承継した税理士法人(被告)に対して営業権相当額の支払いなどを求めたものとなっています。

被告が顧問先を引き継いだ経緯は、東京都内で税理士事務所を経営していた原告相続人の父であるA税理士が死亡する前日に被告税理士と病院で面会し、死亡する直前に、酸素吸入器を付けた状態で「今後のこと、事務所のことを頼む」という趣旨を被告税理士に対して発言したとされ、これに対して被告税理士は「わかりました」と答えたとされています。

被告税理士は、熊本市内で税理士事務所を経営していましたが、A税理士が経営していた事務所を自分の事務所と統合するかたちで被告税理士法人を設立したとされています。引き継いだ顧客は法人約30件、個人約50件とのことです。

この事業承継に対して対価の支払いは特になかったところ、A税理士の子である原告相続人は「A税理士と被告税理士との間で本件事務所の事業を譲渡する旨の合意は成立していないと主張し」、「被告税理士法人が承継した本件事務所の顧客やノウハウなどの無形の財産権またはのれん代は少なくともA税理士の年間収入の1年分である4000万円を下ることはなく」、事業承継の対価として4000万円超の支払を被告税理士法人に求めたとのことです。

なお原告は上記の価額の妥当性を裏付けるものとして、他の税理士による鑑定評価書を提出したとされ、その鑑定評価は以下の算式で行われていたとのことです。

{継続可能年間収入×75%×1/2}+{過去3年間の所得合計×1/2}=4097万5733円

上記の算式の根拠は明らかではありませんが、裁判内での証人(税理士)の証言として紹介されていたことからすると、税理士が他の税理士の顧客基盤を承継する場合の対価として「約1年分の売上相当を毎々月3~4年で支払う」というようなこともあるようです。個人経営の士業では顧客を探すのが大変なので、対価を支払ってでも顧客基盤を引き継ぎたいというケースもあり、何らかの対価を支払うということはむしろ普通ではないかと思われます。

それではいくらが妥当なのかですが、非上場会社のM&Aでは3年分の営業利益額くらいを「のれん」として対価に上乗せるというようなことも、しばしば耳にします。何故3年分なのかなどは特に理論的な根拠はないようですが、事業(あるいは会社)といえども、当事者がそれで納得すればよいので、3年分くらいであれば売手も買手も合意しやすいくらいの価額になるということなのではないかと思われます。

では、上記のケースでは最終的にどのような判断が下されたかですが、東京地裁は被告に対して300万円の支払いを命じたとされています。上記記事においてこの300万円がどのように算出されたのかについては述べられていませんが、裁判所は以下のように判断したとされています。

まず、病院での会話は1,2分であったことや、酸素吸入器を付けていたような状況であったことを勘案すると、事業承継の合意が当事者間であったとは認められないから、事業承継は法律上の原因を欠くと判断したとのことです。

そうだとすると、そもそも承継自体が無効なのではということになりますが、税理士と顧問先との委任関係は税理士の死亡により終了する(民法653条1項)から、亡くなった税理士からの顧客の引き継ぎはあくまでそれらの顧客が税理士と顧問契約を締結する意思を有しているからこと成り立つものであり、引き継ぎに応じるかどうかは顧客の自由であると指摘したとのことです。よって、対価の支払いの合意がない場合に必ず対価を請求することができるとは認めがたいとしました。

そういいつつも最終的に300万円の対価の支払を何故認めたかですが、「亡くなった税理士から包括的に顧客の引き継ぎがなされたからこそ、多数の顧客との間に一挙に継続的な長期の顧問契約が締結されることがあるとも考えられることから、このような場合ににまで委任契約の性質に拘泥して営業権の対価が一切発生しないとするのは相当ではないと思われる」として対価の支払の余地があると判断したとされています。

もともと東京での顧客基盤を有しなかったこと、結果的に大多数の引き継ぎがかのうであったことから無形的財産価値を認めた一方で、本来的に顧問先と税理士とは個人的信頼関係によるものであること、被告税理士法人は遺族等から具体的な引き継ぎを受けておらず自ら営業努力をした結果大多数の顧客の引き継ぎに成功したことと認められること、A税理士の仕事には単発の業務も相当程度含まれていたことを勘案し、税理士の年収を基準とするのは妥当ではないと判断したとのことです。

顧客数だけではなんともいえませんが、単発の業務があったとはいえ年間4000万円程度の収入があった事務所をこの訴えを起こした相続人(子供)が継いでいなかったのはもったいないなとは思います。

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