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平均功績倍率1.5倍までは許容範囲?-役員退職慰労金

T&A masterのNo.722 のニュース特集に「役員退職金の過大判定で東京地裁が注目判決」という興味深い記事が掲載されていました。

この東京地裁の判決では、「特段の事情がない限り、同業類似法人の平均功績倍率の1.5倍を用いて役員退職給与の相当額を算定すべき」という判断基準が示された点が注目されるとされています。

この判決により、法人税更正処分の一部が取り消されることとなりましたが(過大として損金算入が否認された部分もある)、国側はこの判決を不服として控訴しているとのことです。

この原告法人は建材金物の製造販売等を目的とする同族会社で、平成20年10月に死亡退職した代表取締役に対して、功績倍率法に基づく役員退職給与4億2000万円を以下の算式で計算したうえ、臨時株主総会の決議を経て平成21年8月期中に支給したとのことです。

最終月額給料240万円×勤続年数27年×(役員倍数5倍×功労加算1.3倍)

つまり、原告法人功績倍率を6.5で計算した額を支給していました。

これに対して国は以下の三つの方法を示した上で、法令の趣旨に最も合致する合理的な方法は平均功績倍率であるとして、平均功績倍率3.26を用いて計算した額を上回る部分(2億875万円)は不相当に高額であるとして損金に算入されないと主張したととのことです。

国が示した方法は以下の三つです。
①平均功績倍率法=平均功績倍率×最終月額報酬額×勤続年数
同業類似法人(退職給与を支給した法人と同種の事業を営み、かつ、その事業規模が類似する法人)の役員退職給与の支給事例における功績倍率(同業類似法人の役員退職給与の額をその退職役員の最終月額報酬に勤続年数を乗じた額で除して得た倍率)の平均値(平均功績倍率)に、退職役員の最終月額報酬および勤続年数を乗じて計算する方法

②1年当たり平均額法=1年当たりの役員退職級の平均額×勤続年数
同業類似法人の役員退職給与の支給事例における役員退職給与の額をその退職役員の勤続年数で除して得た額の平均額に退職役員の勤続年数を乗して算定する方法

③最高功績倍率法=最高功績倍率×最終月額報酬額×勤続年数
同業類似法人の役員退職給与の支給事例における功績倍率の最高値に、退職役員の最終月額報酬および勤続年数を乗じて計算する方法

原告法人は納税者に有利なように最高功績倍率法を主張したとのことですが、東京地裁は最高値は最高値に係る法人の特殊性に影響をうけるため客観性に劣る一方で、同業類似法人の抽出が合理的に行われ、かつ、その平均功績倍率を適用することが相当と認められる限り、法令の趣旨に合致する合理的な方法であると判断したとのことです。

抽出が合理的に行われたかについては、国側が用いた以下の五つの抽出基準を考慮し、合理的と判断しました。
①同一県内に納税地を有すること
②金属製品製造業を基幹事業としていること
③売上金額が原告法人の半額以上倍額以下であると
④死亡を理由とした代表取締役に対する役員退職給与の支払いがあること
⑤訴訟等が係属していないこと

ここまでは、完全に納税者の敗訴濃厚だったわけですが、東京地裁は平均功績倍率を上回ったら、即不相当に高額というのはあまりに硬直的であり、一定の幅を許容するという観点から、「役員の具体的な功績等に照らしその額が明らかに過大であると解すべき特段の事情がある場合でない限り、少なくとも課税庁側の調査による平均功績倍率の数にその半数を加えた数(1.5倍)を超えない数の功績倍率により算定された役員退職給与の額は適正な役員退職給与の額であるという判断基準を示した」とされています。

上記の判断にあたり裁判所は以下の点に言及したとされています。
①平均功績倍率を少しでも超える功績倍率により算定された役員退職給与の額が直ちに不相当に高額であると解することはあまりにも硬直的な考え方であること
②平均功績倍率を採用すると、原告法人の同業類似法人の中にその平均値(平均功績倍率)を超える事例(同業類似法人)があること不合理であること
③納税者側の一般的な認識可能性を考慮すると、事後的な課税庁側の調査による同業類似法人の平均功績倍率から相当程度の乖離を許容すべきであること

納税者からすればそうだ、そうだというところです。1.5倍という基準値が示されましたが注意が必要なのは、「役員の具体的な功績等に照らしその額が明らかに過大であると解すべき特段の事情がある場合でない限り」とされている点です。

この判決においても、対象となった代表取締役に、それ相応と認められる功績があったため(借入金の削減や売上の増加など)、1.5倍までは許容できるとされましたが、特に目立った功績がなければ1.5倍から下方に修正されていた可能性は否定できません。

国側は、1.5倍の根拠が全くないとして控訴したとされており、感覚的にはそれくらいの幅はあってもよいのではないかと思うものの、根拠がないというのはそのとおりだと思いますので、控訴審の判決がどうなるのかに注意してしておこうと思います。

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