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出る杭はもっと出ろ!

有報と事業報告記載の一体化に向けた留意点(その1)

先日参加したASBJの2018年3月期有価証券報告書作成セミナーで、「有価証券報告書の開示に関する事項 -『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取組-」という冊子が配布されました。

具体的には15項目について有価証券報告書と事業報告の記載の共通化を行う際の留意点が述べられています。

法務省のHPでは上記資料について以下のとおり関係法令の解釈上問題ないとしていますので、3月決算会社においては、上記取組で取り上げられている項目の共通化を図ることも可能という位置づけが明確にされています。

本取組に掲げられた「作成にあたってのポイント」及び「記載事例」の内容は,関係法令の解釈上、問題ないものと考えられ、企業において、事業報告等と有価証券報告書の記載内容の共通化を行う際には,本取組が参考になるものと考えられます。

以下、「記載の共通化に向けた留意点」として取り上げられている項目を簡単に確認していきます。

1.「主要な経営指標等の推移」/「直前三事業年度の財産及び損益の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(5)/施行規則第120条第1項第6号)

ここでは、有価証券報告書の「主要な経営資料等の推移」で開示されている項目のうち「1株当たり当期純利益金額」(第二号様式記載上の注意(25)a(h))を「1株当たり当期純利益」と、「純資産額」(第二号様式記載上の注意(25)a(e))及び「総資産額」(第二号様式記載上の注意(25)a(f))をそれぞれ「純資産」および「総資産」と記載することも差し支えないとされています。

財務諸表の利用者からすれば「金額」とか「額」を付けるかどうかというのは、正直気にもしていない部分だと思いますが、作成側からすると、特に脚注の表記などで「金額」が抜けていますというような指摘を受けた経験をした方も多いのではないかと思います。

ASBJの記載事例では、「純資産額」、「総資産額」は従来どおりで、「1株当たり純利益金額」および「潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額」を、それぞれ「1株当たり純利益」および「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」としたものが示されています。

単に「純資産」、「総資産」でもよいとされていますが、これだと金額なのかどうかがわかりにくいので、私見としても「純資産額」、「総資産額」の方が無難だと思います。こちらは暗に会社法が歩み寄れというアピールかもしれません。

なお、「純資産額」と「純資産」の記載方法について取り上げられていますが、「1株当たり純資産額」を「1株当たり純資産」にするという選択肢はないので注意しましょう。

2.財務諸表及び計算書類の1株当たり情報に関する注記(財規第68条の4及び第95条の5の2並びに連結財規第44条の2及び第65条の2/計算書類規則第113条)

冊子で紹介されている順番では15番目の項目ですが、上記1.と関連するので先に取り上げます。

上記より説明するまでもないかもしれませんが、”「1株当たり当期純利益金額」と「1株当たり当期純利益」については、「1株当たり当期純利益に関する会計基準」で用いられている用語である「1株当たり当期純利益」と記載することにより、記載を共通化することができると考えられます」とされています。

ASBJの有価証券報告書の作成要領(平成30年3月提出用)の「(1株当たり情報)」の記載例では、「1株当たり当期純利益」、「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」という表現が用いられるようになっています。

3.「事業の内容」/「主要な事業の内容」(開示府令第三号様式記載上(7)/施行規則第120条第1項第1号)

ここで紹介されているポイントは二つです。

一つ目は、記載内容が同様又は重複する場合には、1カ所にまとめて記載して、当該箇所を参照する旨の記載ができるとされている点が確認されています。例として、「事業の内容」に記載が求められる「主要な関係会社の名称」について「関係会社の状況」にまとめて記載したうえで、そちらを参照することもできると考えられるとされています。

二つ目は、提出会社または関係会社の事業における位置づけ等について、事業系統図ではなく、「バリューチェーンにおける提出会社及び関係会社の位置付けを示す図や表など」を使用することもできると考えられるとされています。こちらは、もととも「事業系統図等によって」とされていますので、「事業系統図」以外であっても問題なかったはずですが、通常は事業系統図がなんとなく記載されているので、投資家がより理解しやすいように工夫して下さいということだと思われます。

上記のような対応をとったとしても事業報告に有報の事業の内容と同様の記載をすることはあまりないと思いますので、記載事項の一体化というよりも、投資家が理解しやすいようにする有報作成の工夫ということかなという気がします。

4.「関係会社の状況」/「重要な親会社及び子会社の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(8)/施行規則第120条第1項第7号)

この作成にあたってのポイントは短いのでそのまま全て引用すると以下のとおりです。

有価証券報告書の「関係会社の状況」の記載には、事業報告における「重要な親会社及び子会社の状況」の内容が含まれているものと考えられます。

上記からすると、有報で記載する事項と、事業報告の「重要な親会社及び子会社の状況」に記載を共通にしても問題ないということのようですが、有報の単調な記載をコピペするよりも以下の富士通の事例のようなわかりやすい工夫をする方がよいのではないかと思います。


(富士通 2017年3月期 事業報告より)

また、同じような記載をするにしても、有報と事業報告では用紙サイズの違いなどからそのままコピペするのは難しいかなという気もします。

5.「従業員の状況」/「使用人の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(9)/施行規則第120条第1項第2号)

この作成にあたってのポイントは以下の二つです。

一つ目は、有報の「従業員の状況」の記載は、事業報告における「使用人の状況」で記載が必要とされている項目が含まれており、”事業報告の「使用人の状況」について、実務上、「従業員」という用語を用いて、共通の記載をすることができると考えられる」とされています。

この点については、事業報告上、既に「従業員の状況」として記載されていることが多いので、結果的には現行の実務に問題がないことが明確になったといえます。

二つ目は、最終結論部分を抜粋すると「事業報告の内容としても、連結会社(提出会社及び連結子会社)に関する状況について、共通の記載をすることができると考えられます」とされています。

連結計算書類を作成している場合は、「使用人の状況」について、企業集団(提出会社及び子会社)の現況に関する事項とすることができるとされていますが、実務上は、有報と同様に企業集団と会社単体の状況を記載する事例も珍しくなく、現行の実務を確認したものといえそうです。

今回はここまでとします。

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