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出る杭はもっと出ろ!

分配可能利益がないのに配当してしまった上場会社-分配可能額を再チェックしましょう

2018年5月28日に東証二部に上場している株式会社アルメディオが「分配可能額を超えた前々期末の配当金に関する第三者委員会の調査結果及び再発防止策について」を適時開示しました。4月27日に公表されていた「分配可能額を超えた前々期末の配当金に関する一連の経緯及び再発防止策について」は目にとまりませんでしたが3月決算の適時開示も落ち着いた時期なので今回は目にとまりました。

適時開示によれば、同社は「平成29 年6 月27 日の第37 期定時株主総会において、1 株当り2.5 円の配当金を行うことを決議し、結果的に、会社法及び会社計算規則により算定した分配可能額が不足しているにもかかわらず、配当を実施した」とのことです。

昨年6月の配当についてなので、おそらく平成30年3月期の配当を検討していた際に「あれ?」と誰かが気づいたのでしょう。

本則市場の上場会社でもこんなことがあるのだなというのが率直な感想ですが、第三者委員会の調査結果では、原因として以下の五つがあげられています。

  1. 社内のチェック機能が不十分であったこと
  2. 社内の体制が不十分であったこと
  3. 社内の関与者の知識が不足していたこと
  4. 外部の専門家に対する過度の信頼があったこと
  5. 連結ベースでの利益剰余金を見て、単体ベースでは分配可能利益が不足していることはないという思い込みが働いていたこと

「外部の専門家に対する過度の信頼があったこと」と信頼されていた監査法人はどこかと確認してみると、明治アーク監査法人でした。4月17日にリリースによると会計監査人の指摘で判明したとされていますが、29年3月期の有報と30年3月期の四半期報告書でサインしている方は変わってないので、監査法人の実務担当者が変わって気づいたということではないかと思われます。

問題となった平成29年6月に実施した配当は、1株2.5円、総額23,533,447円と、率直な感想としては大きな金額ではありません。分配可能利益を超過してしまう位まで配当を頑張る会社なのかと株主資本等変動計算書を招集通知で確認してみると、以下のようになっていました。

利益準備金を加算していたのかと思いましたが「会社法で求められる自己株式の帳簿価格の減算(会社法第461条第2項第3号)が行われずに分配可能額が計算され」ていたとのことです。なお、自己株式を控除しない計算式は平成21年から使用されていたと報告されていますが、分配可能利益を超過したのは平成29年3月期だけのようです。

会社法での分配可能額をどう計算するのかについて条文で確認しようとすると、色々な部分を参照しなければならず結構面倒なのですが、基本的な考え方としては、剰余金はいくらあって、そのうちいくらが分配可能なのかを検討するというような流れになります。

剰余金については会社法446条1項1号で以下のように定められています。

一 最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額
イ 資産の額
ロ 自己株式の帳簿価額の合計額
ハ 負債の額
ニ 資本金及準備金の額の合計額
ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

ホで定める事は会社計算規則149条において以下のように定められています。

(最終事業年度の末日における控除額)
第百四十九条 法第四百四十六条第一号ホに規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額は、第一号に掲げる額から第二号から第四号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
一 法第四百四十六条第一号イ及びロに掲げる額の合計額
二 法第四百四十六条第一号ハ及びニに掲げる額の合計額
三 その他資本剰余金の額
四 その他利益剰余金の額

ものすごく回りくどい規定のされ方ですが、両者を足し合わせて考えると、結局のところ剰余金=その他資本剰余金+その他利益剰余金ということになります。だったら最初からそう書いてくれればいいのにというのが普通の感想だと思います。

ここまではシンプルですが、分配可能額は分配時点における剰余金に基づいて計算する必要があり、期末日から一定の事項が生じている場合にはそれらの金額を加味して計算する必要があります。

具体的には会社法446条2号から7号において、最終事業年度末日後に生じた自己株式の処分差損益等一定項目(2号~6号の五項目と計算書類規則150条で定められている5項の計10項目)の金額を加減算する必要があります

ただし、決算日後期末配当の効力発生日までにこれらの事項が生じることはそれほど多くないので、実際にはあまり気にされていないと思われます(それ故に、該当する事項があれば間違う可能性は高いともいえます)。

最後に剰余金のうち分配可能額を算定することとなります。分配可能額は会社法461条2項で以下のように定められています。

前項に規定する「分配可能額」とは、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下この節において同じ。)。
一 剰余金の額
二 臨時計算書類につき第441条第4項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては、同条第3項の承認)を受けた場合における次に掲げる額
イ 第441条第1項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ 第441条第1項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
三 自己株式の帳簿価額
四 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
五 第二号に規定する場合における第441条第1項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
六 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

臨時計算書類による配当や事業年度末日後に自己株式を処分しているようなイレギュラーと思われるケースを除外してシンプルに考えると、分配可能額=剰余金-自己株式ー6号で定める項目(法務省令で定める項目)となります。

法務省令で定める項目は計算書類規則158条に定められており、10項目が定められています。関係することが多いと思われる項目を二つピックアップすると、その他有価証券評価差額金と土地再評価差額がマイナスの場合のみそれらの金額を控除する必要があります(プラスの場合は分配可能額に加算することはできません)。

上記のとおり、該当事項がある場合には考慮しなればならない項目がたくさんありますが、最低限としては、その他資本剰余金+その他利益剰余金-自己株式-その他有価証券評価差額金(マイナスの場合のみ)-土地再評価差額(マイナスの場合のみ)くらいにとらえておいて、計算してみるとよいのではないかと思います。

一般事業会社において、そこまでギリギリの線で配当するというケースは多くはないと思いますが、監査等委員に弁護士と会計士がいても、連結の利益剰余金が配当に対して十分に大きいと配当可能額も十分あると考えてしまうということが起こりえることが上記のケースで実証されていますので、招集通知発送前にもう一度確認してみるとよいかもしれません。

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