menu
閉じる
閉じる
閉じる
  1. 東証一部で独立社外取締役を2名以上選任している会社の割合が9割超に
  2. 交通機関による遅延証明書があっても遅刻分は無給?
  3. 四半期開示制度について「一定の結論」はどうなった?
  4. 18年3月期改正税効果を早期適用した会社の注記はどんな感じ?
  5. 大手監査法人から中小法人への会計監査人交代が鮮明
  6. 取得後3ヶ月の実績でのれん6億円の減損、そして上場廃止
  7. 宿泊予約サイトへの掲載手数料で消費税の誤りが散見されているそうです
  8. 自己株式取得はどの時点で認識すべき?
  9. 自社製品の社員販売はどこまでなら安くても大丈夫?
  10. 執行役員に「執行役」と同等の規律を設けることが提案されているそうです
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

取締役就任時の慰労金特約が持つ意味は?

経営財務3367号に小林公明弁護士による「役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<200> 取締役就任時の慰労金特約」という記事が掲載されていました。

この記事の要点は「取締役が、その就任の際に、会社との間で退任時の慰労金について特約を締結しておくことは、どのような意味があるのか」という問いに対する結論が「特約の内容によっては、慰労金が、当該取締役の正当な理由のない解任によって、会社がその者に賠償すべき損害と認められる可能性が高まる」というものですが、関連して取り上げられていた事例に興味をひかれたので細かく確認していくこととします。

上記の質問にあるような特約が「損害」として認められた事例として紹介されていたのが、世界4大会計事務所のメンバーファームである監査法人が100%株式を保有するアドバイザリー業務を行っている株式会社(以下「X社」とします)の事例でした。

当該株式会社は6月決算とされているので、監査法人の事業年度からトーマツ以外の三つのいずれかであると推測されます。

前提知識として会社法上の取扱いを確認しておくと、会社は株主総会決議によって、いつでも取締役を解任することができるとされています(会社法339条1項)。ただし、任期中に正当な理由がなく解任された取締役は、会社に対して解任によって生じた損害の賠償を請求することができるとされています(会社法339条2項)。

そして、これまでの判例でその正当理由が認定された事案は、以下の5類型に整理されるとのことです。

  1. 職務遂行上の法令定款違反行為
  2. 心身の故障による職務遂行の支障
  3. 職務への著しい不適任や能力の著しい欠如
  4. 経営判断の失敗により会社に損害を与えた場合
  5. 業務執行の障害となるべき客観的状況

さて、紹介されていた事案で、原告は、もともと経営コンサルタント業等を目的とする株式会社を代表取締役として経営しており、平成23年12月31日に原告の持株約79%を他の株主4名全員とともに、X社に5億5000万円で譲渡し、その後当該会社はX社に吸収合併されたとされています。

そして、平成24年1月1日に、監査法人の常務理事を兼務していた代表取締役社長に代わり、X社の代表取締役に就任しました。その際の委任契約には、委任契約の解除によらず原告がX社の取締役を退任する場合には、退職一時金を支払う旨が記載されていました(5年経過後は1億5000万円など)。なお、この委任契約の締結については、監査法人でも審議の上、了承していたとされています。

原告は、平成26年9月10日に重任された後、平成27年4月1日にX社の株主総会決議により解任されましたが、X社は正当な理由に基づく解任であるとして、損害の賠償は不要と主張したようです。

X社は原告を解任した理由として10個の原告の行為を挙げたとされ、その中の一つに(海外提携ファームの)「グループ方針の不遵守」や「受託承認手続に係る規範の不遵守等」というものがあります。

大手会計事務所は、ブランディングに力を入れていることや監査業務のクライアントには提供してはならないとされている業務もあるので「グループ方針の不遵守」や「受託承認手続に係る規範の不遵守等」というのは大きな問題だと考えられますが、判決では10個の原告の行為について、その全部を各独立して正当な理由に当たるということはできないとされました。

「グループ方針の不遵守」については、原告の見解又は行為等に、監査法人や海外提携ファームの方針と一致しない点があったとしても、正当な理由があるということはできないとされ、「受託承認手続に係る規範の不遵守等」については、原告の行為がX社の代表取締役の行為として問題のあるものであったことは否定できないとしても、そのことから正当な理由があるととまでいうことはできないとされています。

会計事務所からすると厳しい判決だと感じますが、原告は、業績が低迷して営業力も低いX社の収益を改善し規模を拡大することを目的として代表取締役に招聘されたところ、平成24年6月期からは黒字に転じ、それ以降解任まで黒字を維持し、従業員数も毎年100人ないし150人ずつ増加していたという実績があったとので、原告が代表取締役として著しく不適任であると断ずることはできず、解任について「正当な理由」があるとまでいうこともできないとされたとのことです。

委任契約で特約があったとしても、そもそも退職慰労金は株主総会の決議がないと支給できないのだから、「当該解任がなければ当該役員が残存任期中及び任期終了時に得ていたであろう利益の喪失による損害」とはいえないのではという点については、取締役就任時の委任契約を唯一の株主が了承していたため、株主総会決議に変わりうると判断されたということのようです。

M&Aを行う場合にも参考になる事例ではないかと思います。

関連記事

  1. たまに脚光を浴びる「優先株」-オリンパスの騒動で登場

  2. 株主総会のスケジュール(その2)-会計監査人設置会社

  3. 会社法施行規則及び会社計算規則の改正(2018年3月)

  4. 配当金は持参債務-株主が海外に居住している場合はどうする?

  5. 東証本則市場の社外取締役2名以上選任は約6割も増加が見込まれます…

  6. 過年度計算書類の訂正を総会への報告事項とすることはできるか?

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

カテゴリー

ページ上部へ戻る