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株式譲渡契約時の未払租税債務について売主に賠償命じる判決

M&Aで株式を取得するような場合、契約に表明保証条項が含まれているのが一般的です。何を対象とするのかは最終的に売り手と買い手の交渉次第ということになると思いますが、租税に関する表明保証違反で争いとなった事案がT&A master No.752で取り上げられていました。

これは、「非上場株式の譲渡をめぐり、譲渡対象会社に法人税等の申告漏れがあったことが株式譲渡契約に違反するとして買主が売主に損害賠償を求めていた訴訟」で、結論としては売主に約1億年の損賠賠償が命じられたというものです(東京地裁平成30年3月28日判決)。

この事案では、株式譲渡契約書に「申告条項(法人税等の適正な申告を行っており、その支払及び納付が完了している旨)や判断影響条項(経営に影響を及ぼす簿外負債や将来具体化する課税問題等が存在しない旨)が盛り込まれていた」ところ、株式譲渡後の税務調査で、過年度の売上除外や仕入に係る請求書等の不保存が発覚したことに伴い修正申告を行ったとされています。

買主は、これにより譲渡時に未払租税債務が約1億4000万円の簿外債務が存在することとなったため、契約書の申告条項や判断影響条項に違反するとして売主に約1億800万円の損害賠償を求めたとされています。

これに対して、「売主は、買主は本件会社の財務・税務内容を監査し、株価を算定しているので契約締結前に本件会社の税務申告の疑義等を知り得たと指摘し、買主には重大な過失があるから売主の責任は免れるべきであると主張した」とのことです。

上記の主張に対して、裁判所は、「買主が本件会社のデューデリジェンスをしても売上除外や仕入れに係る請求書等の不保存は総勘定元帳に記載がないなどの特性に照らせば、買主がこれらを認識しなかったことに過失があるとはいえないとした」うえで、「本件会社には譲渡契約当時において売上除外や仕入れに係る消費税の申告漏れによる未払租税債務(簿外負債)が存在し、将来具体化する課税問題があったことから、申告条項や判断影響条項に違反していると判断した」とされています。

結論としては、買主は表明保証で救われている訳ですが、このケースではデューデリジェンスを実施しても判明しにくいものであったため、買主に重大な過失はないと判断されているのであって、決して表明保証があれば買手は救われるというわけではないという点には注意が必要です。

デューデリジェンスを外部の専門家を使ってきちんとやるとそれなりの費用がかかるため、表明保証でなんとかならないかという買手の担当者もいたりします。しかしながら、すんなり違反を認めて損害を補償してくれるケースは少なく、上記のケースのように裁判で争う必要があったり、そもそも売主に資力がなくなってしまっていれば裁判を起こしても損害を補償してもらえないということも十分考えられます。したがって、やはりデューデリジェンスはそれなりにやっておくべきものだと考えられます。

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